IT系の企業では、「コラボレーション(共同製作)」とか「アライアンス(同盟・協力)」という単語を日常的に使う。
ひとつのシステムを開発するにしても、多数の専門的技能や経験が要求されるゆえ、単独企業では仕事を完結させることができない。おのずと複数企業による共同作業が必要になる。
そこまでは良い。問題なのは、誰といつ手を組むかである。
名著『7つの習慣』の作者・コヴィー博士は、人の成長モデルは次の三段階を経ると述べている。
1.依存・・・誰かの助けを必要とする段階
2.自立・・・自分で考え、自分で行動し、自分でその結果を受け入れることができる段階
3.相互依存・・・孤独な自立にとどまらず、自立した者同士が新たな高みに向かって相互に依存しあう段階
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コヴィー氏が提唱するこの人間成長モデルは、人だけにとどまらず、企業においても全くあてはまるはずだ。
企業にとってはこうなるだろう。
1.依存・・・金融機関や取引先、親族などの支援なしでは経営がたちゆかない段階
2.自立・・・生みだしたキャッシュフローや自己資本の中で経営が行われている段階
3.相互依存・・・自立した企業同士が手を組んで、単独では困難な課題に挑む段階
今朝の日本経済新聞によれば、国税庁が発表した2002年事業年度の法人所得動向が次のように発表されていた。黒字法人の数や申告所得、赤字総額などいずれも過去最低だという。
・全国法人数 2,896,000社
・黒字企業 30.3% (資本金1億以上の大企業では48.3%が黒字)
・法人税額 9兆3,500億円
・赤字企業の欠損総額 33兆116億円
大企業に比べ、中小零細企業が苦戦している姿が浮き彫りになっている。
国家予算82兆円のうち、半分を占める42兆円が税収によるものであり、残りの大半は国公債による。税収42兆円のほとんどが法人税・所得税・消費税によって賄われるわけであり、中小企業が「自立」、「相互依存」する状態がいち早く望まれるわけだ。
閑話休題
ここからは、あえて「7つの習慣」に一部異議を唱えてみたい。
作者のコヴィー博士は、順序として「依存」→「自立」→「相互依存」へと成長すると述べている。決して、「依存」から一気に「相互依存」に進むのではないとしているが、その点に私は疑問を感じている。
今はまだ「依存」の段階にあるとしても、目線は、「自立」を通り越して「相互依存」に置くべきだろう。もちろん、「自立」がなくては何も始まらない。赤字企業にとっては自立することこそ焦眉の急である。赤字企業を救うのはコラボレーションでもアライアンスでもない。それらは「自立」企業と「自立」企業がやるものであって、「依存」企業が相手を頼りにやるべきものではない。
それでもあえて私が、目線だけでも「相互依存」に置くべきだと主張するのはなぜか。なぜなら、それが企業経営にとって大切な「志」であり、「理念」であるからだ。そもそも志や理念は、最初から自立という次元など相手にしていないのである。