「予算は無尽蔵にある。時間もた~っぷりある。法的な制限や制約など何もないし、コンペティターも存在しない。だから思う存分、好きな建築物をデザインしてくれ」
という仕事があったとしたらどうだろう。そんな“夢のような仕事”は一生かかっても一度もない。いや、果たしてそうした仕事を“夢のような仕事”と言うべきだろうか。
世界的な建築家・安藤忠雄氏ともなれば、引く手あまたで仕事を断るのに必死、という印象がある。だが、そうではない。闘う建築家として今なお、あえてコンペに挑み続ける様子を、自著『連戦連敗』のなかで次のように述べている。
・・・私は自分なりの建築の闘いを始めた。その闘いは、現在もなお続いている。それなりに経験も積んできたはずであるが、状況は相変わらず厳しい。近頃はコンペによる仕事が多いので、とりわけそのことを実感する。何しろコンペはほとんど連戦連敗といっていいほどの惨憺たる状況なのである。常に競争状態という緊張にさらされるし、その上その苦労もなかなか報われない。・・・
意外だなぁ、と思った。
20人程度のスタッフを抱える世界ブランドの安藤建築研究所。それが今なおコンペに挑み続けて“連戦連敗”とは誇張もあるに違いない。だが、その闘う姿勢は素直に学びたい。
同著は、さらにこう続く。
・・・年にいくつもの大規模なコンペ・プロジェクトに参加するから、それをこなそうとしているうちに、気がつくとスタッフ全員がいずれかのコンペにかかりきりになっているという状況もめずらしくはない。もちろんその一方で契約された職業的建築家としての仕事もきっちり完遂していかねばならない。スタッフは肉体的、精神的に疲弊しきっている。特に敗退が続いたあとの新たな挑戦は応えるようだ。コンペの招待が来るとスタッフは一様に「またコンペを闘うのか」と諦めともつかない表情をする。しかし、そのようなギリギリの緊張状態の中にあってこそ、創造する力は発揮される。
・・・
なるほど、その通りだ。
刻々と走り去っていく時計の針を横目でみながらメルマガを作る。
「エッ!もう10時」
「ワッ!11時になっちゃった」
「ウソォ、昼を過ぎたよ」
こんな感じで、毎日のメルマガをギリギリの緊張状態で書いているから続けることが出来る。「いつでも自由にお好きに書いて」というメルマガなら一日で終わるだろう。
<安藤氏の連戦連敗の話題、明日につづく>
本『連戦連敗』
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