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続・見込客が奏でる音楽

自宅で飲むワインをネットで買う場合、「このワインを注文しようかどうか」と、決断をためらうことはないはずだ。どのワインにするかを迷うことはあっても、購入するのに一大決心など必要ないのだ。なぜなら、それが低額であり、ふだんから買い物慣れしているからだ。

ところが、マンションや高級車など、買い物慣れしておらず、購入することによって経済状態のバランスが変化するような場合、人は決断するのにふんぎりがいる。
それでも、決断になれている人なら、自分で意思決定でき、きっとこういうに違いない。

「Mさん、わかりました。いろいろ考えましたが、今日私は、購入することにしますので、手続きを進めて下さい。契約書はありますか。」

ところが、多くの場合はみずから進んで「買います」とは言わない。決断することの補助を必要としている。営業マンがその補助役を買ってでる必要があるのだ。それは次のようになるだろう。


客:「そうだねぇ。たしか、毎月11万円だったよね。う~ん、微妙な金額なんだ。そんなにすぐには決められないよ。」
M:「でも、思い切って決めちゃいましょうよ。」
客:「でもなぁ・・・、(うで組みして沈黙)」
・・・(双方20秒ほど下を向いて無言)
M:「お客様、今までも9万円の家賃を毎月支払ってこられたわけですから新たに11万円の経費が増えるわけではないのです。正味2万円にすぎません。しかも、このわずか2万円の差額によって賃貸から自己所有の財産に変わるのですよ。」
客:「そうだよね。」
M:「しかも、それによって今後の銀行信用面もプラスになるでしょう。何より奥さんやお子さんがマイホームで生活されることの喜びや幸せのことを思うと、親としてご主人として、最高のことをしてあげたと言えないでしょうか。」
客:「なるほどね。」
M:「今日お申し込みをいただければ、すぐに必要な書類などを整えますので、来月早々には快適な新居での生活が始まります。皆さんきっと喜ばれますよ。手続きをするうえで、ちょっとだけお尋ねしたいのですが、ご自宅の電話番号は?」
客:「自宅? え~とね、052・・・」

さて、この会話のやりとりにはふたつのポイントがある。まずは、「クロージング鉄砲」の存在だ。

見込客はマンションがほしい。だが、11万円という費用をこれから何
年間か、払い続けることができるかどうか自信がないのだ。こうした相手に対して契約の決断を迫る場合は、営業マンがその後押しをしてあげる必要がある。相手が、いかに正しい決断をしようとしているのかを力強く再確認させるのだ。その際の、トークを身につけていなければならない。先の例にあるように、M君が使ったトークがそれだ。

二つめのポイントは、「YES」を引き出そうとしない、ということだ。「Mさん、わかりました。買います。」という言葉を待っていては契約できない。言葉ではなく、行為で意思決定してもらえばよいのだ。

上の例にもあったように、必要書類に向かってペンを構え、「電話番号は?」と聞くだけでよい。見込客は、それに答えることによって、自動的に契約の意思表示をすることになるのだ。自宅の電話番号を知らない人はいないわけだから、決断のふんぎりがつかない人でも電話番号を語る。必要事項を書き終え、最後のサイン欄だけはペンを差し出せばそれでよい。

くり返し申し上げる。

見込客は、決断の後押しを必要としているので、あなたの確信ある態度やことばを待っている。決して、あなたの方から「ご検討ください」などと緊張場面から逃亡してはならない。また、「YES」を言わせようとするのではなく、電話番号を言わせればそれで充分なのだ。こうのように、決断に不慣れな見込客を正しくリードしてあげよう。