北海道にある伊藤板金商会株式会社(仮名)は社員数 11名。最近は社員旅行に力を入れていて、旅行の企画は委員会で決めるという。
「社員旅行委員会」と名づけられたその委員会は、毎年メンバーを入れ替えて三名のメンバーで構成する。最初のうちはごくノーマルに温泉旅行やグルメ旅行が続いたが、東北の震災があった年から様相が一変した。
一昨年は秋に「復興支援キャラバンツアー」と銘打ってキャンピングカー三台をレンタルし、支援グッズを山積して被災地を回った。どの被災地に何を届けるのか、どんなルートをたどって被災地入りするのか。膨大な時間を費やして計画し、11名全員で被災地慰問の旅を終えたとき、物資の支援と慰問活動は毎年やろうと決まった。社員の個人旅行や家族旅行は当面のあいだ、東北に限定することを皆で誓い合い、いまも続いている。
翌年、つまり昨年だが、社員旅行委員会は高野山での修行生活を企画した。高野山だけで三日も過ごすのはイヤだ、という声もあがったが、社員旅行に関しては委員長の権限は社長より強い。結局全員が座禅を組み、写経し、作務(掃除など)をするという修行僧のような生活を二日間行い、三日目は朝から大阪のテーマパーク「USJ」(ユニバーサル・スタジオジャパン)で息抜きしてから北海道に戻った。
そして、今年の委員長はさらに斬新な企画を練っているという。今年の秋に予定している社員旅行では、なんと「三日間の無人島生活」をするらしい。しかもルールがあって、無人島に持ち込むことができる物資は一人 10kgまでに制限する。食料品は委員会が持参するそうなので、個人的な食品や衣類、パソコンなどを 10kgに制限しなければならない。
無人島に何をもっていくか?本にするか酒にするか、すでに社内でそうした話題が持ち上がっているそうで、すでに社員旅行が始まっているのである。
伊藤板金の伊藤社長の談話。
・・・私(伊藤)の友人の会社は社員旅行するときには社員旅行専門の旅行社にお願いしています。いろいろと凝った企画を提案してくれるそうで、研修も兼ねた社員旅行には最高のようです。ただ、当社はそれを自分たちの手作りでやりたいと思って、昨年あたりから社員旅行委員長をそそのかして風変わりな企画を練ってもらうようお願いしているのです。
・・・
今年は無人島だそうですが、どこの無人島に行かれるのですか?
・・・まだ決まっていませんが、候補は三つほどあるようです。委員長の権限でその三つのうちどれが良いか事前リサーチしてくるようにも言っているのですが、仕事が忙しくてネットと電話だけで済ませようと考えているようです。(笑)
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素晴らしい活動ですね。
・・・いえいえ、始まったばかりです。それより先日の武沢先生の薩摩・知覧の歴史ツアーは大変興味深い行程でした。本当は参加したい気持ちだったのですが、日程があわずに失礼しました。来年の委員長には知覧や江田島など忘れられつつある戦争の事実を学ぶツアーもしてみてはどうだろうと提案するつもりです。今の若い社員は歴史や文化のことを知りませんしね。
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伊藤社長とお別れしたあと、さっそくパソコンで無人島を調べてみたらこんなホームページが見つかった。見ているうちに私も無人島に行きたくなってきたので、とりあえず Wish-List に追加しておいた。
★無人島貸します http://www.playguide.org/mujin.html