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大巧若拙

今夜は大阪で講演がある。20名程度の小さい会議室はすでに満員御礼!だそうだ。60名用の部屋で「20名でした」と言われるよりは 15名の部屋で「立ち見が出てます」と言われた方がうれしい。今夜の場合は満席の上に女性が 9割だという。それを聞いて気合いが入り、すでに作ってあった資料を作り直したほどである。今夜の K さんはなかなか心得た方のようだ。

大阪といえば、関西でコンサルタントの仕事をしている旧知の U 氏からおもしろいメールが届いた。氏は一風変わったコンサルタントで、指導者の立場にある人たちの話し方をマンツーマンで指導する。特に経営者は人前で話す機会が多く、その内容や話し方いかんによって相手に与える影響が大きく左右する。懇切丁寧な氏の指導がおおいに受けて、ホームページやブログを一切やっていないのに、大企業の経営者や政治家、公職にある人たちがクチコミで彼を訪ねてくるという。

そんな U 氏がくれたメールにはこんなことが綴られていた。

話術にコンプレックスを持っている人がとても多く、最近、依頼者のニーズが増えているのはお笑い系だ、という。落語家や漫才師のような話し方をマスターしたいという声が急増中とのこと。ちゃんとした経営者が真剣な顔をして、「お笑い芸人の○○さんのように話したい」と言う。経営者だけではない。教育者やスポーツ指導者、業界団体の役員などからもそうした相談が増えているそうで、「変わった世の中になったもんだ」と結んでいた。

指導者がお笑い、私は大いに結構なことだと思う。冒頭の司馬遼太郎の言葉にもあるように、リーダーは少々馬鹿に見えるくらいでちょうど良い。才気走った顔をしていては相手が警戒してしまうのだ。
「できるな、この人」と思わせたら「負け」である。「なんだ、こんな程度か」と思わせたら「勝ち」なのである。

それを四字熟語で『大巧若拙』(たいこう じゃくせつ)という。出典は「老子」で、真の名人は見かけの小細工などしないから、一見、下手に見える。自慢話や得意話をしてしまい「すごいですね」と相手に言われたときにはもう負けだ。ただし、相手によっては本当に馬鹿にされて終わるときもあるので、使いこなしにはご注意を。