「アベノミクス」への期待から為替や株式の市場が好転しているが、このまま息切れせずに景気が良くなっていって欲しい。
そもそも、「景気が良い」と私たちが我が事として実感できる時とはどんな時だろうか。
・仕事が増え、売上や収入も増える
・長年欲しかったものが買える
・就職できる(失業が減る)
・有利な転職ができる
・投資したお金が増える
・これから先ももっと良くなると思える
・・・etc.
このようにして、景気が良いと町中、国中に活気が満ちる。だが、当然のことながら良いことばかりではない。景気が良いときには別の問題で頭が痛い。
・仕事が多すぎて納期が大変(連日残業が続く)
・人手不足、しかも求人難
・物価も人件費も上がるので思ったほど利益が出ない
・お金の余裕はあっても時間の余裕がない
・皆が利益をあげているのでこの程度の利益に満足できないし、焦る
・・・etc.
「景気が悪い」のも辛いが、「景気が良い」のも楽ではない。どっちに転んでも経営者は楽ではないわけで、そういう意味では、景気とは四季のようなものだと考えてはいかがだろう。それにあわせて生きていくしかないのだ。夏の暑さや冬の寒さに私たちは順応できるが、むしろ季節の変わり目の温度差にやられやすい。今まさに、そうしたタイミングなのかもしれないので、経営者は景気の動向をよくウォッチしていこう。
景気動向については、マスコミの報道だけでなく、内閣府が毎月発表している「景気動向指数」をチェックするのもおすすめだ。公表されるのは二ヶ月前のデータで、今公表されているのは安倍政権誕生前の 2012年 11月の統計値である。
★景気動向指数(内閣府) → http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di.html
この「景気動向指数」とは、毎日の暮らしの様子や中小企業経営の様子をデータに表したもので、大きく分けると「先行系列」「一致系列」「遅行系列」の3つにわけられている。
「先行系列」とは、景気の動きに先行して反応をしめす指標のことで、東証株価指数や消費者態度指数(消費者が考える半年先の暮らし向き)などで、これらはおおむね数ヶ月先の景気の動きを示すものと言われている。
「一致系列」とは、景気の動きにあわせて反応をしめす指標で、有効求人倍率や生産指数などがある。これはまさに、景気の現状を示しているものとされる。
「遅行系列」とは、景気の動きに遅れて反応をしめす指標で、家計消費支出や完全失業率などがある。これらは、半年から 1年遅れで反応してくる数字だという。
企業業績を表す指数はすべて「一致系列」である。たとえば「所定外労働時間指数」や「商業販売額」(小売業と卸売業)、「全産業の営業利益」「中小企業出荷指数」(製造業)など、気になる指標はすべて「一致系列」の中に含まれている。
つまり、日本経済全体でみればあなたの会社の業績は「一致系列」に加えられるのだが、私たちの感覚では業績は「遅行系列」だろう。なぜなら、今日の販売努力が実を結ぶのは今日でも今月でもなく、少し先だからだ。
もし、販売努力に関係なく売上が増減しているとしたら、それは景気の変動のあおりをモロに受けているだけかもしれない。あなたの経営努力によって創造される顧客や市場は、少々遅れて結果がやってくるものなのだ。
企業業績や個人所得といった最終結果は半年先、一年先という具合に遅れてやってくるとするならば、その間、私たちはプロセスに意識を集中しなければならない。計画した通りに粛々と行動する。結果に一喜一憂したり、右顧左眄(うこさべん)したりしない。プロセス段階で飽きない、焦らない。それは、企業業績のみならず、ダイエットも学習も恋愛もスポーツの上達もみな一緒のことだろう。
今日は「先行」「一致」「遅行」という三つの言葉をご紹介した。そうした視点で経営やビジネスをとらえると、違ったものが見えてくる可能性がある。