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「重職」の”重”の一文字を忘れ、軽々しい言動をとることは厳に謹まねばならない、というのは思いもつかなかったことです。確かに、重役の重は重い(おもい)ですよね。なんだかこれが一番基本的な事じゃないかと思うようになりました。意識して行動しようと思います。
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岐阜県の S 社長から届いたメールである。
現職の総理大臣が靖国神社に参拝したとき、マスコミが「参拝されたのは公人ですか、私人ですか?」と聞く。私人ならば問題ないが、公人なら問題がある、ということが現実問題として起こりうるわけで、立場によって許されることと許されないことが存在する。
周囲に及ぼす影響を考えながら自らの言動を決めるという生き方は楽なことではない。だが、それが重職に就いたものの運命と心得、むしろそれを成長の機会ととらえていきたい。そのための心得を説いた「重職心得箇条」(佐藤一斎著)を昨日号では第八条まで紹介した。
今日は続きの第九条から十七条まで一気にいこう。
九.管理者は、部下の仕事の評価や、賞罰を与える権限を自ら行使せねばならない。民主的であろうとしすぎて、そうしたものまで部下に委譲するようなことは間違っている。部下の仕事をよくよく吟味し、評価することに手抜かりがあってはならないのだ。
十.仕事には重要なことと重要でないこと、緊急のことと緊急でないことがある。そうしたものを織りまぜながら、会社全体を見わたしたなかで自部門の方針や計画を作る必要がある。単年度だけでなく中期、長期でも計画を作り、優先順位にもとづいて着々と実行していくのが管理職の仕事である。
十一.管理職はいつも気持ちにゆとりをもち、寛大な心であらねばならない。どうでもよいこと、小さなことに固執して小さな人間になってはならない。管理者らしく部下にいつも包容力をもって接するべきである。
十二.管理職はいつも自分の考えや意見をもち、みずからの意志を貫く覚悟が必要である。だが、それと同時に他人の意見を謙虚かつ素直に聞き、それに納得したら持論をサッと変える柔軟さもあわせもっていなければならない。持論がない、意志がない、というのも問題だが、持論や意志にとらわれ過ぎるのも困りものである。
十三.部門経営はワンパターンやマンネリを避けよう。緩急自在に行って、時には厳しく、時には優しく、時には早く、時には緩くマネジメントしよう。また他部門との協力関係や、部下同士の組合せや連係プレイなど、大胆に組織をマネジメントをすればよい。その根底に信と義を忘れなければ部下は必ず納得し、ついてきてくれるものである。
十四.自然の営みは完璧で無駄がない。それと同様に、良い仕事は完璧で無駄がない。それでいて、成果はすばらしい。仕事がうまくいかなくなると、修正したり取り繕ったりするが、ややもすれば複雑で難解な仕事になっているのに気づかずにいる。いや、むしろ、そうした複雑さを好むようになってしまう。特に古参社員ほどそうした複雑さを好むが、あなたの部門の仕事は自然の営みのように、誰がみても分かりやすくシンプルなものであらねばならないのである。
十五.管理職の日ごろのふるまいが原因で組織の規律が緩んだり乱れたりすることがある。タテマエとホンネを使い分けたり、うわさ話や陰口がはびこるような組織では部門の経営がうまくいくはずがない。自ら襟を正して公明正大で規律ある組織をつくることが管理職の大切な仕事である。
十六.情報を隠したり小出しにするなどして自らの立場を誇示したり、部下の心情をもてあそぶような行為はあってはならない。情報不足によって部下を疑心暗鬼にさせるようなことなど、厳に謹むべきである。もちろん機密情報は公にしてはならないが、それ以外の情報はいちはやく部下に公開し、情報格差をなくすように努めるのが管理職の仕事である。
十七.春に新しい年度が始まるように、新しい年度を開始するにあたってはまず人心を一新して清々しい気分でスタートを切ろう。部下のやる気を引き出すような目標をたて、評価基準を明確にして賞罰も明確にしよう。仮に報償の予算が足りないからといって、寒々とした世知辛い内容ばかりを発表しているようでは部下はついてこなくなる。予算が足りないなら足りないなりのやり方があるものだ。あなたの部門目標が達せられるように、最大限の知恵をつかって部下と部門をマネジメントしてほしい。
いかがだろう。原文と訳文の「重職心得箇条」は以下のホームページにある。昨日・今日の二日間にわたって述べたのは武沢流解釈なので、厳密に理解していただくにはそちらをあたっていただくのが良いと思う。
※重職心得箇条(ウィキペディア)
http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=3524