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続・水と油と・・・

昨日のつづき。

グーには絶対勝てないチョキの前に、グー以上に強い相手が出現した。名前はパーという。どんなに強いのか想像できないほどだ。そんな相手を加えて三人で勝負することに気が引けていたが、お母さんを悲しませたくないのでとりあえず試合会場に向かったチョキ。

すでにグーもパーも来ていた。ふたりで練習試合をしていたようで、グーが全敗して元気がない。チョキとパーは初対面の挨拶もそこそこに、さっそくリングにあがった。ここが試合場らしい。今日は合計で 30試合することになっている。

そして運命の一試合目、審判のかけごえにあわせて「ジャンケンポン」のタイミングで手を出した。いつもならグーとチョキだけだが、そこにパーが加わっていた。あれ、負けじゃない、引き分けだ。

そのまま 30試合戦ったが、結局すべてが引き分けだった。これはチョキの人生観を変えるできごとだった。グーと戦っていたと
きはいつも負けたが、パーには毎回勝てるのだ。そして三人で戦うと引き分けになる。

試合前には「どうせ 30戦全敗さ」と思っていたチョキだが、30戦して 30引き分け(つまり無敗)という成績に胸を張った。その場でお母さんに電話した。「お母さん、一度も負けなかったよ」

するとお母さんは喜んで、料理の話をしてくれた。

「水と油に酢を混ぜると中和するのを知ってる?揚げ物にソースをかけるとおいしく食べられるのはソースに含まれる酢のおかげなの。酢があるから揚げ物の油っこさが中和されるのよ。あなたたち三人は水と油と酢の関係みたいね」

お母さんの話を聞いて、歴史好きのチョキは薩長同盟の話を思い出した。もともと薩摩と長州という犬猿の仲を和解させ、同盟を結ばせたのは酢のような存在の竜馬のおかげ。竜馬のビジョンと人柄が薩長を結ばせ、明治維新へと向かわせたのだった。

一対一ではうまくいかないことでもそこに第三者が加わることで一気に事情が変わってくることがある。それは水と油に対する酢のようなものだ。

結局、試合のあとグーチョキパーの三人は子供たちが大好きなあの遊びで帰っていた。ジャンケンしたあと勝った人がやるあれだ。「グリコ」「パイナツプル」「チヨコレイト」。最近では、「グラタン」「パパイヤ」「チヨコレイト」というそうだが・・・。