友人の社長が経営計画発表をやるというので興味があって参加してきた A 社長。感想をきいてみたら「昔の日本軍の大本営発表みたいだった」という。発表会は立派だったが、率直にいって「いいことばかりが計画書に書いてある。本当にやれるのだろうか?」という印象を受けたらしい。たしかに、その計画がやれればそうした実績になるのは分かるが、やれない可能性もある。そのあたりが、モヤモヤしながら聞いていた理由だというのだ。
経営は有言実行をむねとするので、まずはこうした「有言」する場があること自体はすばらしい。あとは計画を実行し、成果がでているかどうかを確認する場が必要になる。IR(アイアール)というのはそうした進捗状況を社外に発表する活動をいう。
一般的な IR(Investor Relations)は、企業が株主や投資家に対して投資判断に必要な情報を提供する活動をいう。業績や財務状況などの情報を公開することが多く、上場企業のホームページには必ずアップされている。なかには、毎月の売上高の様子を刻々と報告したり、大口の受注契約が決まったらその都度報告する会社もある。
こちらの会社などもその一例だ。
日創プロニティ→ http://www.kakou-nisso.co.jp/ir_press.html
またこちらのゲームメーカーでは、ゲームソフトの開発状況を公開し、毎週金曜日に情報更新している。自社が開発中のゲームソフトを前もって公表しているめずらしいケースだ。
Klab → http://www.klab.com/jp/ir/gamerelease.html
インターネット以前の時代には IR は紙媒体で行われていた。「有価証券報告書」などは昔、証券資料館など借りて読むか、丸善などの大型書店で売られていたものだ。投資しようと思う会社の有価証券報告書を一冊数百円で買って読むか、借りて読む。いずれにせよ、面倒くさいことであった。その点、最近はネットで手軽に無料で入手できるのでありがたい。
その「有価証券報告書」に 10年前から、事業のリスクを開示することが義務づけられているのをご存知だろうか。2003年 3月に「企業内容等の開示に関する内閣府令」というものが出た。それによって、有価証券報告書の中に「コーポレート・ガバナンスに関する情報」「事業等のリスクに関する情報」「経営者による財務・経営成績の分析」の記載が義務付けられたのだ。
こちらのソニーの有価証券報告書には、ソニーが抱えている事業のリスクが明示されている。以下、一部だけを引用してみたい。
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(1)ソニーは CPS 分野を中心に一層激化する競争を克服しなければなりません。
(2)ソニーは、競争力を維持し消費者の需要を喚起するため、新製品、半導体やコンポーネント、及びサービスの頻繁な導入及び切り替えを適正に管理しなければなりません。
(3)ソニーは、より高度に専門化した企業や経営資源において優位性を有する企業との競争にさらされています。
(4)ソニーの研究開発投資が想定した成果をもたらさない可能性があります。
(5)ソニーの構造改革は多額の費用を必要としますが、その目的が達成できない可能性があります。
など。
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全部で 40項目(12ページ)にわたってソニーのリスクが詳細に書かれ
ている。詳しくはこちら。
★ソニー有価証券報告書
→ http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/library/h23_q4.pdf
私たちも経営計画書のなかに、「わが社のリスク」というページを設け、そこにリスク情報を開示することが真摯な計画になるだろう。また毎月の進捗状況の様子をホームページに公開するなどして、IR活動に力を入れることで経営力がさらに向上するのではないだろうか。