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マスタリー

マスタリー(達人)の道には落とし穴が多いようだ。私の愛読書の一冊『達人のサイエンス』(日本教文社刊)では、私たちが達人になるために、次の13の落とし穴に注意しようと呼びかけている。

1.生活上の葛藤
2.せっかち(結果を急ぐ)
3.よくない指導を受ける
4.競争のない状態
5.過度の競争
6.怠惰
7.けが
8.薬物
9.賞やメダル
10.虚栄心
11.くそまじめ
12.一貫性がない
13.完全主義

私自身、この13項目のなかの幾つかには、相当強い思い入れがある。

だがそれは後述する。まず大切なこととして、基本的なものの考え方を確認しておきたい。

・マスタリー(達人)
・グレート(偉大)
・サクセス(成功)

などというと、何かを成し遂げた人、何かの結果を残した人、として過去形的に使われることが多い。だが、それは間違っている。これらの単語の共通点はすべて、結果ではなく経過を指すものである点に注目していただきたい。

スポーツ選手やアーチスト、名経営者や名教育者は、たしかに常人とは別世界のプレイをみせてくれる。最高のパフォーマンスをもたらしてもくれる。だが、それは彼らの本質の一部に過ぎない。

彼らがマスタリー、グレート、サクセスであるのは、今もなお歩み続ける道のプロセスにいるからだ。明けても暮れても挑戦し、失敗し、進化し、さらに挑戦する。そして今なお強いエネルギーを持って前進しようという意思をもった人間であるからこそマスタリー、グレート、サクセスなのだ。

外部の人間からみれば、他人が合気道の練習をしているのを見学するのと同じく、彼らの行為は昨日と比べても違いがわからない。

だが、当の本人はどうか。来る日も来る日も練習と進歩を積み重ね、その中から確実に何かをつかみ、自らの血となり肉と化してゆく。まるで求道者のようにあくなき練習が続く。

企業経営も同様だろう。何をもって良い経営、良い経営者、良い企業と呼ぶかという問題だ。

それは上記のマスタリー、グレート、サクセスと同義なのである。外部の者からみれば去年と何も変わっていないように見えても、確実にその裏側にあるシステム・組織・情熱・技術・モティベーションは進化しているのが良い経営だ。

そうした経営のマスタリーの道を歩むためには、もう一度、冒頭の13項目について私の体験をふまえてお話ししておきたいことがある。