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真の指導とは

Rewrite:2014年3月26日(水)

フルシタ工業株式会社の営業部に配属された山下君と上田君は、同期入社だ。そして、一年間の営業活動を締めてみたら、同じ製品を同じ価格で売りながらも結果には5倍の開きがあった。山下君が勝ったのだ。入社試験の成績はお互いに遜色がない。
この開きの原因は何なのだろうか?そして、上司としてあなたは、この二人にどのような指導を追加すべきだろうか?

さっそくフルシタ社長にお会いしてこの話題に触れたところ、次のようなが返事だった。

「山下君は予想通りよくやってくれた。我社期待のホープだと思っていたが、期待以上に頑張ってくれた。それに反して、上田君にはがっかりさせられたよ。もう少しやってくれると思っていたのだが・・・。努力不足ということでしょうな。彼には先日、『山下君という良きライバルがいるのでもっと頑張るように』と指導しておきましたよ。」
こうしたことはよくある話で、社長としてもこの程度のハッパをかけることに問題はない。
しかし、直属の上司である営業部長の鬼塚マネージャーまでもが社長と同じようなハッパのかけ方をしていることが問題だ。
直属上司である鬼塚マネージャー自身の育成指導方法に偏りがあると受け止めるべきであり、決して上田君個人の問題としてゆだねてしまってはいけない。

実際に、山下君と上田君の二人に会ってみたら性格はまるで違う。山下君は根っからのサービスマンで、人をとらえるのがうまい。気配りも出来るし話もうまい。上田君は対照的な性格で、社交性は乏しく、内に引きこもった印象がある。言葉もとぎれとぎれだ。こうしたことから、私たちは浅薄な結論を出しがちだ。それは、次のような属人的な結論だ。
「営業は自分を売ることが大切だ。お客さんから好かれるような人間でないと契約はもらえない。営業としては山下君のような人物を採用すべきで、上田君のようなタイプは営業に不向きだ」

もちろん魅力的なパーソナリティは営業の武器には違いない。しかし、それを属人的な問題としてとらえていては、企業としての営業能力の向上につながらない。セールスは、知識・技術といったテクニカルな面と、心構えやモティベーションといったメンタルな面との2つに分けてアプローチしていく必要がある。一例として次のようになる。

1.テクニカルの問題
<知識>
商品知識(自社製品と他社製品)
業界知識と会社知識
顧客心理や顧客ニーズの知識
計数の知識

<技術>
コミュニケーションの技術(聞き方や話し方の技術)
見込客発見の技術
アポイント電話の技術
商談プレゼンテーションの技術
提案書や企画書、見積書の作成技術
クロージングの技術
契約締結の技術
アフターフォローの技術
人間関係構築の技術
スケジュール管理や時間管理、勤務習慣の技術

2.メンタルの問題
<心構え>
対人関係の心構えを磨く
自社製品への信頼と自信
営業力を磨くということの意義深さを知る
目標達成への執着心を磨く
お客様に感謝されることのうれしさを知る

<モティベーション>
個人として夢や目標を持つ
仕事目標の達成が個人目標の達成につながっていることを知る
会社のビジョンと個人の価値観に接点があることを確認する
絶えず目標と実績を対比し、行動計画を最新に保つ
小さい成功体験を積みかさね、自信を深める

鬼塚部長と山下君、上田君の3人はこうした指導ガイドラインに沿ってお互いに成長しあい、励まし合って新たな高みへと到達していくことが大切だ。短期的な営業実績だけをとらえて、個人と個人を単純に比較しているだけのリーダーでは、真のリーダーとは呼ぶことができないのだ。