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手術なう

いよいよ今日が勝負の日。午後 1時半から 1時間の手術になる。麻酔が効いている時間はおおむね 3時間だそうで、夕方 4時には目が覚めるだろう。

昨日の午後は担当の麻酔医師に全身麻酔の流れとリスクに関する説明をうけた。最初はインターンか助手かと思ったほど、若い男性医師だ。

「全身麻酔中は呼吸が停止しますので人口呼吸の管をノドに通します」
「え、呼吸が停止?心臓も止まるのですか?」
「いえ、心臓は動いています。呼吸機能が停止するのです」
「そうですか、単に眠るわけじゃないんですね」
「ええ、通常の睡眠とは異なります」
「人口呼吸ですか」
「そうです。稀に気管支が収縮して管が通らない方がみえます。その時は別の方法で呼吸を確保しますが、それもうまくいかない場合には、ノドの下を切開して管を挿入することになります。ちょっとノドをアーンしていただけますか」
「アーン」
「はい、OK です」

鼻にガーゼを当てれば麻酔がきいて深く眠ってしまう。その間に手術を済ませるもんだと思っていたら、まさか呼吸機能まで停止するとは。しかも最近の麻酔は、点滴の中に麻酔薬が含まれていて、その投与をやめれば自然に覚醒していくものらしい。

次にリスクを聞いた。

「麻酔中に心筋梗塞や脳梗塞になる確率は 0.008%~0.04%、心停止する確率は 0.1%、覚醒後に嘔吐感をもたれる方が 20~30%、歯が折れたり抜けたりする確率は 1%……。麻酔が原因で死亡する確率は 1万件に対して 1件程度です。」そんな説明を受け、同意書を渡された。よく読んでサインせよという。

「なるほど。ちょっと考えちゃいますね」ベッドの上に座り込んで私が言う。「はい?」と麻酔医師。「たかが歯のためにこんなリスクをおかすべきでしょうか」すると、なかなかの名言をこの若い医師は言った。

「そうしたリスクの数字をご覧になって心配される方が少なくありませんが、心停止の確率 0.1%というのは、交通事故にあう確率よりもかなり低いんですよ。普段の生活でも私たちはリスクを負っています。それを自覚していないだけです。車で名古屋のまちなかを走るより、ベッドの上で多くの医師や看護師に囲まれている方が安全率は高いですよ」「そんなもんですか」

医師が帰ったあと念のため交通事故の発生率(発生件数÷人口)を調べてみた。すると、日本で一番事故率が高い香川県が 1.177%、もっとも低い島根県でも 0.308%ある。だから 0.1%というのはタクシーに乗るより安全なんだと自分に言い聞かせることにした。妙な納得の仕方ではあるが、ここまできたらジタバタせず、平然と医師に身をまかせる方が身のためだろう。

どこのどなたか分からぬが、ほぼ私とおなじ手術をされた方のブログを見つけた。これを読んでますます安心した次第。偶然だが、名古屋の方のようだ。→ http://silvermag.blog.so-net.ne.jp/archive/201302-1

ありがたいことに、たくさんの励ましのメールで元気をいただいているが、全身麻酔でヘルニアの手術をされた北海道の H さのメールをご紹介しよう。手術の恐怖心や術後の痛みを楽しめ!というお便りだ。

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H です。たくさんの応援メールが届いているでしょうから、控えようと思ったのですが、初めての麻酔が心配かと思い、メールしました。私も昨年末に初めて全身麻酔をして椎間板ヘルニアの手術をしたのですが、鎮静剤の後に麻酔の導入剤(白い液体ならプロポフォールです)を入れられて「ちょっとボーッとしますが、効くのが遅いですね」と言った瞬間に眠ったようで,次の瞬間には「H さん、終わりましたよ」と呼ばれて目が醒めました。そんな感じなので、自分は麻酔と手術前後は楽しめました。術後 1日は ICUでおしっこの管が入ったまま動けませんでしたが、iPhoneを持ち込んで facebookに逐一状況をアップして楽しんでいました(笑)。実は術後に座骨神経の痺れが出て大変でしたが、2週間の入院はあっという間でした。先生も逐一メルマガで報告されることと思いますが、痛みに負けず入院生活を楽しんで下さい。
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動物病院の院長先生らしいメールだが、はたして私が H さんのような境地に至れるかどうかだ。

そもそも歯に関しては、自然治癒が期待できないという。こうなる前にマメに歯医者に行っておけばよかった。いや、これを機会に歯医者に通おう。