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謝罪会見余話

昨日、外出先で喫茶店に入った。コーヒーを注文し、iPhoneでメールチェックしていたら、隣の席から大きな声が聞こえてきた。私と同年輩とおぼしき女性二人が何かに憤慨している様子である。

A:ねぇ、ひどいよね、あれ。だってブラックタイガーを車エビだって出してたわけでしょ
B:なめとんのか、って感じだわ~
A:芝エビも何とかエビだったわけでしょ
B:小エビのことを総称して芝エビとよんでいたらしいけど、だったら魚の卵の総称がフォアグラか、っちゅうねん
A:うちは肉屋だけど、前に偽装コロッケで業者がつかまって社長が懲役になったけど、それと今回とどう違うの?
B:一緒よ、一緒。責任者は有罪にしなきゃみんな同じことをするわ
A:あのホテルの外国人、「誤表示しましたが何か?」という感じですごく高慢
B:何しに出てきたの、って感じ。そもそも外国人って、謝ると罪を受け入れることだから絶対謝らんのでしょ
A:じゃああれは、謝罪というより弁解の会見ね
B:謝罪したいのなら、映画の『謝罪の王様』を見てからにしてほしいわ
A:わ、私それみてないの、どう?観たの?……(その後、映画の話題に変わっていった)

このお二人はおそらく実際の被害にはあっていないはずなのに、これほど立腹するのは謝罪会見の印象のせいだろう。私はニュースの一場面しか見ていないが、オリオル・モンタル総支配人の受け答えは質問をはぐらかすことがあったり、「教育不足」とか「問題を改善する」などの言葉が頻発した。おそらく管理責任者として社内で発言するような内容を謝罪会見で述べていたわけで、場違いなものと言わざるを得ないだろう。謝罪よりも釈明に重きをおくと今回のような対応になる。もう少し顧客感情を尊重した発言をすべきであった。

先のご婦人が「外国人は絶対謝らない」と言っていたがそうでもない。謝るべきときには顧客になりかわって社内担当者を叱る。ドラッカーの本にこんな例が載っている。

・・・
(ベルンハイムというデパートを経営していた)ヘンリーおじさんは、クレーム処理の仕方も独特のものを開発していた。

クレームを受けた者はいつでも大声で「クレーム担当副社長!」と周囲の誰かを呼びつけることができる。すると近くにいた 35歳以上の誰かが飛んでいって自己紹介をし、「いかがされましたか?」と聞く。ひととおり顧客のクレームを聞いたあと、「当ベルンハイムでは、そのようなことはあってはならないことです。おい担当は誰だ、連れて来い」と近くの店員に言う。

近くの店員が顔を出す。

「お前はクビだ」。驚いた客がクレーム担当副社長をなだめる。担当が泣き出す。そこで仕方なく執行猶予にしてやる。お客が帰る。するとただちにクレームの徹底調査を行う。怒鳴られ役をさせられた店員には、後で特別手当てが出る。
・・・
(「ドラッカー わが軌跡」ダイヤモンド社 より)

このヘンリーおじさんのやり方は芝居がかっているし、小手先のテクニックである。だが、人間心理を実によくとらえた社内マニュアルだ。つまり、言い訳や弁明、釈明というものが顧客のクレームの前ではいかに逆効果であるかを知り抜いているわけだ。

クレーム処理や謝罪会見にふさわしい態度や表情、言葉づかいはどういうものか、良い事例をご紹介したいのだがすぐに思いつかない。

どなたかご存知の方、お教えていただきたい。