昨日お届けした「最低資本金免除」に対して、東京の牧野さんからメールを頂戴した。与信管理コンサルタントという専門的立場からみても、今回の法案に対しては好意的。しかし、与信する側にとっては、新しい宿題が突きつけられというところだろうか。また企業側にとっても、資本金のもつ意味が従来に増して大きくなってくる気配だ。
メールをご紹介しよう。
私は与信管理のコンサルタントしているのですが、最低資本金免除に関し、少し違った角度からコメントさせていただきたくメールいたします。違う角度というのは、債権者側からということです。
最低資本金免除の制度は大変面白い試みであり、独立開業を目指す人間には朗報でしょう。私も2年前に独立したばかりですので、資本金集めの苦労はわかります。また一時的にお金を借りて会社を設立し、登記完了後に、大部分の資本金を引き出してしまう人が多いのも実態です。
また、全世界的に見ても、米国をはじめ、資本金に制限を設けていない国のほうが多く、起業を後押ししています。米国では1分に1社の割合で会社が誕生し、3分に1社の割合で会社が倒産しています。新会社の方が3倍多いわけですから、米経済が活性化するものうなずけます。
しかしながら、そうした新会社に対して、与信(審査)する側、つまり債権者側としましては、必ずしも手放しで喜べる制度ではありません。
現在でも、中小企業、特に小規模事業者、SOHOに対する与信管理というのは、暗中模索の部分があり、これに最低資本金免除企業が加わると、こうした会社に対する与信管理をどう考える方という新たな課題が出てきます。なぜなら、最低資本金免除企業の自己資本比率は、かなり低いものになり、安全性に問題があり与信できなくなる可能性があるからです。
また、海外では、払込資本ではなく、自己資本で判断しますが、日本では簡易的に取引先の安全性を資本金(払込資本)の額で判断します。最も身近な所では、クレジットカードの申込書に勤務先の資本金を選択する欄があるのを皆さんご存知だと思います。
現在、小規模事業者やSOHOに対する与信管理というのは、金融機関はもちろん、一般の事業会社にとっても大きな課題となっています。従いまして、法案にあるように財務情報の開示というのは、ぜひとも義務付けていただきたい点です。
また、これから起業される方には、資本金というのは必ずしも形式的なものではなく、会社の信用度を測る一つの指標である点も是非ご認識いただきたいと思います。一言のつもりが、かなり長くなってしまい申し訳ありません。何かの参考になれば幸いです。
実は、私も2誌ほどメルマガを発行しています。両誌で、7000名ほど読者がいます。
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これからも楽しみにしております。ありがとうございました。
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別の視点を与えてくれた牧野さんのご意見に感謝したい。牧野さんのメルマガ、面白そうなのであなたもいかがだろうか。
最低資本金が5年間という期限付きながら免除されるというのは、起業を企てる立場の人には朗報だ。その一方で、投資や融資、与信をする側にとっては今まで以上に明快な基準とルールがないと混乱しかねない、というご指摘だ。
たしかに企業人とは、与信する側でとしての対応も考慮しておく必要がある。行きつく所は、「キャッシュフロー経営」ではなかろうか。
この法案が可決することによって今年の年末から年始に向けて、今一度、キャッシュフロー管理の方法や、その計画書・報告書の作り方に関するブームが巻き起こるに違いない。