仕事だけの人生なんて味気ない、などという昨今の風潮に流され、仕事を軽視するようなことがあってはならない。昨夜はその思いを再確認する機会があった。
・・・「もう一度思い切り仕事がしてみたい。」 病床で井植は弟に向かってつぶやいた。でも井植には、女性に喜ばれる仕事が出来たという充実感があった。
・・・
昨夜のNHK「プロジェクトχ 家電元年・最強営業マン立つ」でのラストシーンである。洗濯機の開発に命をかけた男・井植が、余命いくばくもない状況に追い込まれて、入院先のベッドから外をながめて言ったセリフ。それが、「もう一度思い切り仕事がしてみたい。」である。
もっと仕事がしたかった・・・と言える人生ってなんて素晴らしいだろう。仕事の時間がそれだけ光り輝いていた証明ではないか。そういえば、『週刊現代』2002/7/20号に「ソニーの重役 大研究」なる特集があった。株主総会で開示された主要企業5社の役員報酬を対比させ、ソニーの重役は他社とどこが違うかを分析しようという試みだ。
同紙より、役員一人当たりの平均年収データを引用する。
・新日本製鉄 2883万円(役員数 41人)
・三井住友銀行 2826万円( 〃 23人)
・東芝 2456万円( 〃 16人)
・大同生命保険 1872万円( 〃 22人)
・ソニー 8307万円( 〃 13人)
この特集によれば、ソニーは少数精鋭で報酬が高く、重役出勤が許されない激務であるとしている。そして、次のように結んでいる。「ソニーのような“ハッピーワーカーホリック”で大金を勝ち取るなら非難されるいわれはない。めざせ、サラリーマンの夢」
ささやかな幸せには目をつむり、気力・体力・知力のすべてに全力投入を要求されるようなタフな仕事が面白い。
一生を通してそんな仕事をし続けることは出来ないかも知れないが、そうした時間がどれだけあったかが勝負だ。しかもその仕事は、他人が運んできてくれるわけではない。自ら作りだすものでなければならない。
三洋電機の井植のように、私たちはいまそうした仕事をしているだろうか。