『プロフェッショナルの原点』(ドラッカー著、ダイヤモンド社)のなかに、こんな一節がある。
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上司が一年以上一人も変わらないことは稀である。上司をマネジメントするためにまず行うべきことは、上司リストの作成である。
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このドラッカーの指摘は大企業ではその通りだろうが、中小企業にはあまり当てはまらない。上司が何年も変わらないことが起こりうる。それはやむを得ないことである反面、大きな問題も抱え込むことになる。組織変更が滅多に行われない会社は人事が硬直し、その結果、仕事の仕方が硬直することが多い。
仮に、あなたに上司がいて、その人が毎年変わるとしよう。
去年の上司はマメな報告を好んだ。逐一、仕事の状況を報告するように言われるし、日報やメールよりも口頭での報告を重視された。なぜなら、上司がその場で指導できるからだ。ところが今年の上司は細々とした報告は要らないという。しかも基本的には、日報やメールを使った報告を好む。なぜなら、文書だと履歴が残るからだ。
このように、毎年変わる上司に応じてあなたは仕事の仕方を変えねばならない。あなたが本来期待されている成果、それが営業であれば受注目標を達成すること、にプラスして、上司が好む仕事スタイルを身につけねばならないのだ。「去年の上司はこう言いましたよ」と言い訳したところで何も始まらない。「今年は去年ではない」と言われるだけである。その結果として部下は新しいボスの要求に応えるために仕事の仕方を変える必要が生まれる。毎年何かが変わるということが仕事の常識として叩き込まれる。
部下から見て、最も甘い上司は、何をしても許してくれるし、評価が変わらない上司である。部下から見て最も手強い上司とは、上司の要求が明快であり、しかも適当にお茶を濁すことを許さない上司である。しかもそれを評価に直結させる上司である。
あなたや幹部社員の「上司力」を確認しよう。あなたは社員からみてどんな上司に思われているか。また、あなたの部下やその部下は上司のことをどのように見ているか確認してみよう。