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高彦君の自堕落

ようやく手に入れたノーアポの休日。高彦君は、寝起きのまどろみのなかでこう考えた。

「よし、今日は休みだぞ。天気も良さそうだから、朝はお気に入りのカフェでゆっくり読書して、そのあとジムで汗を流そう。午後は県立美術館のゴッホ展を観て、デパートで Y シャツとネクタイ を買おう。夜は久しぶりに友だちの誰かと一緒にワイワイとお酒でも飲みたいな。そうそう、時間があればベランダの掃除をしてガーデニングの準備もしなきゃ。よし起床!」

そう思いながらベッドを抜け出したものの、休日には休日らしい楽しそうなテレビ番組をやっている。高彦君はパジャマを着たままテレビを見ていたら台所にサンドイッチを発見。昨日、コンビニで買っておいたのだった。結局、カフェに行くのをやめにして、冷蔵庫から牛乳を取り出して、サンドイッチを朝食にした。テレビを見続けていたら結局、昼になってしまった。ジムにもゴッホ展にも買い物にも行っていないが、テレビで駅伝中継が始まったので、腰をすえて母校の後輩たちに声援をおくることにした。だが、途中で眠くなって居眠りをした。2時間近く眠っていたようで、気づいたらもう駅伝放送が終わっていた。どこが勝ったのだろう?夕方になると「笑点」の放送が始まった。あのテーマ曲を聞くと、大喜利まで見たくなる。外はもう暗くなっているし、友だちとの外食はやめにして、出前のピザとビールを頼んで夕食にした。考えてみたら、テレビの前とトイレを往復しただけで今日一日はまったく動いていない。パジャマのままだし、洗面すらしていない自分に気づく高彦君だった。

「生産的にすごそう」と思っていた休日が「自堕落な休日」に終わってしまった。自己嫌悪に陥ってモティベーションまで下がった高彦君は、月曜日の朝を憂うつな気分でむかえることになる。

あなたは、高彦君のような経験がないだろうか?私はある。いや、「あった」というべきか。ひどい時などは、三連休の三日間ともそんな日を過ごしたこともあった。そのときは、「なんて自分は休みの過ごし方が下手なのだろう。私には休みなどは要らないんだ」と考え、休日もオフィスで仕事をしたこともある。

あるとき、私は自堕落に対処する方法を見つけた。それは、自堕落を予定に組み入れることである。「休日に関しては無為にすごすのも悪くないと」考えるようにしたのだ。予定がビッシリ入っていて生産的に過ごす休日がある一方で、予定を何も入れずに朝から衝動的に過ごす休日もある。ただし、予定したことと違う過ごし方をすると自己嫌悪になるので、最初から自堕落に過ごすと決めてその通りにすればよい。

私たちの身体や心は定期的な休養を求めている。睡眠やリラックスによって身体の休養は得られるが、心の休養のためには、何も判断を必要としない状態を作ってあげることであり、自宅でパジャマのまま過ごすことほど心の休養になるものはない、というのが持論なのである。ただし、やり過ぎるもよくない。自堕落な休日を過ごすのは年に数日以内にすべきではなかろうか。

あなたの自堕落対処法があれば、お聞かせ願いたい。