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スイスチーズ方式

昭和 53年初版の『ラーキンの時間管理の法則』という本がある。時間管理のコンサルタント・アラン ラーキンによるもので、私にとって初めて読んだ時間経営に関する本でもある。いつかの引っ越しの際に処分してしまい、今では絶版となって縁遠くなっていたが、最近どうしても読んでみたくなった。

「スイスチーズ方式」「インスタントタスク」など独自のネーミングで解説されていた箇所が今も忘れられない。考えてみたら 35年前に読んだビジネス書の印象が残っているということは、当時は相当なインパクトを受けたはずである。ネット書店の功績はそうした懐かしの一冊に簡単に巡りあえること。当時の定価 980円と変わらない値段で中古書を一冊手に入れた。

「スイスチーズ方式」とは、圧倒されそうになるほどの大きなプロジェクトにスイスチーズのような穴をあけていくこと。穴をあけるためのひとつひとつの作業を「インスタントタスク」と呼び、それらは即座にやれる比較的簡単な仕事のことを指す。

圧倒されそうになる大きなプロジェクトとは、本当に重要な仕事である。それゆえにたくさんのタスクから構成されいて、どこからどのように手をつけるべきか途方にくれることがある。それを手つかずで放置すると精神衛生に良くないし、それでも放置しておくと仕事が辛く感じたりする。しかし、そんな時こそまず「インスタントタスク」から攻めていけば、敵の牙城は意外に簡単に突きくずせることが分かったり、本来は楽しい仕事であることを発見したりする。

たとえば、「来期予算の作成」という仕事があるとしよう。今月中にあなたがそれをやり終えねばならないとする。もし To-Do リストに「来期予算の作成」と入力したまま放置したとすると、きっと一日延ばしになり土壇場ギリギリになって誰かに手伝ってもらわないと終わらない可能性もある。

だが「インスタントタスク」を見つけようとするとどうなるか。おのずと計画はもっと詳しく書き出さねばならないことに気づく。そもそも、タスク(作業)を書き出したものが To-Do リストであり、To-Do リストのかたまりがプロジェクトであり、プロジェクトのかたまりが目標である。

「来期予算の作成」は To-Do ではなく、プロジェクトなのである。それは複数のタスクから構成されているので、それらを書き出さねばならない。その結果、「昨年度の資料を手元に用意する」、「作成用のエクセル書式を用意する」など、5分か 10分で出来てしまう仕事を見つけることができる。それこそ、インスタントタスクなのである。

それらを片づけることで、手つかずだったチーズに穴があき「スイスチーズ」状態になる。そうなると 30分や 1時間かかるタスクにも簡単に取り組めるようになる。たとえば、「今期の実績見通しを決める」、「担当者会議で来期の見通しを意見交換する」などだ。

今ではそうした時間術・仕事術は GTD と言われてかなり普及した。だが、そんなことを 35年前から教えてくれていたのが本書であり、ある意味で、GTD の原点はここにあるのかもしれない。

★ラーキンの時間管理の法則
→ http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=3754