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第五回和僑世界大会にて


「人はタイで熱くなる」をテーマに先週末、第五回和僑世界大会がバンコクで開催された。物産展への来訪者を含めると優に 1,100名を超す参加があり過去最大規模となった。もともとは香港で 2004年に始まった小さな勉強会だったが、それが徐々に会勢拡大。ネットの普及、日本経済の低迷、アジアの発展と同調しながら和僑会も大きくなった。中国人ネットワーク・華僑にちなんで「和僑会」という名称にしたのが 2005年である。「世界大会」は 2009年に始まっている。

タイ王国和僑会・谷田貝良成氏の開会あいさつ、駐タイ公使による祝辞、和僑会会長・筒井修氏のあいさつと続き、今回の基調講演をされる大前研一氏が登壇した。

歯切れが良いし人間的な奥行きも伝わってくる。それが氏の講演を初めてお聞きした第一印象。声も良いので聞き取りやすい。テーマは「ボーダーレス時代に日本人は対応できるか?」というもの。結論からいえば、今のままでは日本は国際化からますます遅れかねないと憂国のメッセージであった。

華僑や印僑、韓僑などのデータも交え、日本人の海外進出の状況や、日本が海外からの人材や投資をどの程度受け入れているのかを国際比較した。豊富なデータを駆使し、大型スクリーンにパワポのシートを次々に表示させ講演をすすめる。アドリブたっぷりの軽妙な語り口、ところどころシャレもかまして、1000人の聴衆をつかんでいた。ギリシャの債務危機について「返す金はアテネー」など、大前節とでもいうべきパフォーマンスで 3時間があっという間に過ぎた。

日本という国、あるいは日本人という国民がボーダレスの時代にいかに立ち後れているか、日本政府がいかに国際関係についてビジョンをもたずに仕事をしてきたか、という点がよく理解できた。「だから我々は、こうして和僑をやっているのだ」という誇りもメンバー個々はもてた事であろう。

個人的には、会場にいた多くの若者に日本人としての誇りや勇気を与えるようなメッセージも入れていただきたかった。質疑応答で、海外起業したばかりの一人の若者がこんな質問をした。「海外で自分が日本人であることを自覚する機会が増えましたが、大前さんからご覧になった日本人の強みや素晴らしさはどこですか?」その若者はどうやら、その答えを大前さんの言葉で聞きたかったのではないか。

それに対して大前氏は即答した。「まじめなところでしょうな」と。そして、「目標が与えられたらみんな一斉にそれをやる。公害問題だって 5年で解決しちゃった。ただ残念なことに日本人はビッグピクチャーが描けない。戦後処理の問題だってドイツを見習うべきで…(以下、ふたたび日本のダメなところを語る)」

「まじめだけが取り柄」とは、何をしてもダメと同義語に近いと思う。影響力が大きい講師であるだけにそのあたりが残念だったが、講師選定の段階でそうした空気になるのは予測できたはずでもある。そういう意味において大前講師は全然ぶれていない一貫した主張の持ち主であることが確認できた。

午後のセミナーは 14時からと 16時からの二回、分科会セミナーが行われた。私は 14時からの分科会で講演し、16時からは私も受講者として学んだ。

日刊メルマガ「平成進化論」の鮒谷周史さんと、個人セールス世界 2位の記録をもつ和田裕美さんの対談、という興味深い設定。テーマは「コミュニケーションとモチベーションアップ」。お二人は10年来の知己だそうで、対談も非常にスムーズだった。

鮒谷さんとは東京のセミナー会場や、共通の友人の結婚式などで顔を合わせることはあったが、こうしてじっくりお話しを伺うのは初めてのこと。和田さんとはこれが初対面である。

お二人の対談については明日につづく。