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ハリウッドのストライキに思うこと

ハリウッドのストライキに思うこと

●全米の俳優ら16万人が加入する米映画俳優組合は7月14日からストライキに踏み切った。
西部ではロサンゼルスで、東部ではニューヨークで、制作会社のオフィスやスタジオの前で賃上げなどを求める抗議デモが一斉に行われた。

●俳優や脚本家たちの望みは待遇改善。AIなどによって著作権や肖像権が侵害され、正当な報酬を受け取っていないことへの不満だ。
納得ゆく契約を締結するまで、映画やドラマの撮影、宣伝活動などはすべてストップされる。

●さっそくその影響が出た。
『ミッション:インポッシブル』のトム・クルーズや『バービー』のマーゴット・ロビーらのPR来日も中止になり、がっかりしたファンも多いだろう。

●1960年にもハリウッドでは大規模なストライキが行われた。このときは映画業界、
音楽業界、テレビ業界、ラジオ業界それぞれが独自に定めた契約条項があり、権利関係が
複雑になっていた。そうした混乱と矛盾のなかで起きたデモ騒動は半年間つづいた。

●ちなみにそのとき、仲裁役の一人として活躍した俳優が、後の合衆国大統領、
ロナルド・レーガンである。
今回のストライキではトム・クルーズが仲裁役を買って出るという話もあり、その流れで
いけばトムもいずれ大統領になるかもしれない

●今回のハリウッドストライキは人間とAIの権利問題に関する人類最初の抗議行動として注目している。著作権や肖像権をもつ側と、それをAIで代用する側とがともに納得できる契約条件とはどのようなものになるのだろうか。

●このハリウッドのストライキ。米国メディアでも連日、成りゆきを報じているのかと思いきや、そうばかりではないようだ。
7月28日のWSJ(ウォールストリートジャーナル)にこんな記事が載ったのが少々意外だった。

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  ・・・【オピニオン】ハリウッド俳優ストの勘違い・・・
彼らは大衆は味方だと思い込んでいるが、大半の人は他に心配することがある。
https://jp.wsj.com/articles/striking-hollywood-actors-have-lost-the-plot-56e6450b
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●要するに「誰も気にしていない」と冷ややかなのだ。
なぜなら、新聞記者が書いた記事も、どこかの誰かに何回読まれたかに関係なく給料は
一緒だ。しかもAIライターに執筆の仕事を奪われつつあるが、ストライキを起こそうと
いう記者はいない。

●俳優や原作者、脚本家は映画が大コケしても決まった給料をもらえるではないか。
権利主張がまかり通る俳優や脚本家はすでに恵まれているのだ、というのがWSJ記者の
主張のようである。私の曲解かもしれないが、おおむねそんなところだ。

●私はWSJほど無関心ではない。
AIの発展、普及は喜ばしいことである。大いに善利用、平和利用していただきいたい。
そして当然ながら、守られるべき既得権益はきちんと保護されねばならない。
その「守られ方」のルール作りがどのようになるのか、ハリウッドに良い手本を期待したいと思っている。