賢い人と人狼ゲームの関係
●時々、家族や親戚が揃うと「人狼ゲーム」につきあわされることがある。
というか、こういうゲームは好きなほうである。
ご存知ない方のために書くと、ランダムに決められた「人狼」がその他の「市民」をいかにだまし抜くかというゲーム。「市民」になった場合はいかに上手に「人狼」をあぶり出すかが問われる。要するにこれはコミュニケーション力のゲームであり、言葉の奥にある相手の真意を見抜く力が求められる高度なゲームなのだ。
●2013年から14年にかけてフジテレビでタレント9人による「人狼ゲーム」が放送されていた。その当時は興味がなかったが、「FOD」(フジテレビのビデオ・オンデマンド)に録画がアップされていたので、先週末に一気見した。
●ロンブーの田村淳、北村弁護士、千原ジュニア、おぎやはぎの小木、ハマカーンの浜谷などは勝率が高い。いずれも弁が立ち、上手にウソがつける。その一方、ウソが見破られやすいのが狩野英孝、アンガールズの田中で、勝率も低い。
●勝率の高い人たちは器用であり、低い人たちは不器用だ。それは賢いか、そうでないかの違いともいえる。賢い人とは自分の役割を瞬時に認識し、それを実行できる人のことをいう。賢くない人とは、役割意識に欠け目的のない発言をくり返したり、ときには誤解を与える発言をしてチームをミスリードする。
●ゲームに勝ちたいと誰もが思う。
賢い人は、勝つことだけでなく、座を盛りあげることも考える。口数が少なくなっているゲストに発言させるよう仕向けるのだ。時にはあえて議論を紛糾させ、誰が「人狼」なのかまったく判らなくさせたり、特定の「市民」を「人狼」だと周囲に思い込ませたりする芸当に長けている。
●そういう点で私はFODにある「人狼ゲーム」のアーカイブは単に娯楽として楽しむだけでなく、社員教育の教材にもなり得るものだと思う。
●本当に賢い人は自己主張だけでなくチームの勝利を優先する。
現実のビジネスでも、賢い人は周囲を活かす。自分が何でも知っているといった自慢などしない。むしろ、知らないフリができる。
知らないフリをすることで相手からさらに情報を引き出すことができるのだ。
●私もZoomセミナーなどで講義中に、「え、そうなの」と驚きの反応をしてくれる人がいると一気に調子が上がる。知らないフリをしてくれる人がいると本当に助かる。反対に知っているよということを表情や態度で示す人がいるとやりにくい。
●『頭のいい人が話す前に考えていること』(安達 裕哉 著)の中に「賢い人とは賢くふるまうことができる人」というくだりがあるが、まさにその通りである。愚かな人とは何も知らない人のことではなく、知っているフリをして相手から情報を引き出そうとしない人である。
●そして高度なことだが、あえて愚かな振る舞いをすることもあるのが真に賢い人だ。
タレントたちの「人狼ゲーム」をみていると、素(す)でゲームに勝つために番組に参加している。当然、笑顔もすくなく勝つことに真剣だ。
●一方、賢い人はゲームに勝つだけでなく自分に期待されているもうひとつの役割を自覚している。それは番組を盛りあげ、次の出演オファーをもらうことと、視聴率を稼いで番組そのものを長続きさせることだ。冗談を忘れないし、笑顔も絶やさない。
●先にあげた勝率の高いプレイヤーはみなそれができているので、10年経った今でも芸能界の人気者だ。
「こんな人いたっけ?」という人もFODの番組にでている。この10年で消えてしまった芸能人だが、プレイぶりをみればそれも当然と思えるはずだ。残酷かもしれないが、コミュニケーションというものの真実がそこにある。