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良書とはなにか

良書とはなにか

●我社では毎朝のミーティングで、輪読会(通称「朝読(あさどく」)を行っている。
今読んでいるのは、シェイクスピアの入門書で、読まず嫌いしている人たちに向けていかにシェイクスピアの作品が、読みやすくておもしろいものかを解説してくれている。実はシェイクスピアは一度も読んだことがなかったのだが、今回『夏の夜の夢』をダウンロードした

●「朝読」の狙いは三つある。

1.良書を読むことで勉強になる
2.本を読むことそのものを楽しく感じる
3.他人が選んだ本を読むことで読書のレパートリーが広がる

●そういう点ではシェイクスピアの入門書は「朝読」に最適だ。
「朝読」で取りあげる本のジャンルは広い。ビジネス全般、会社経営、文学、歴史、学術書、ノンフィクション、健康、投資、自伝・伝記、芸術などの本を取りあげてきた。ただ時々つまらない本を選んでしまうことがある。

●朝読を始めて1年目のあるとき、某チョコレートメーカーの成功物語をひとりのファンが書いた本を読んだ。タイトルは伏せておく。
マニアックなファンの立場から、そのメーカーがどれだけ凄いかを語っていた。知らない事実をたくさん知れて参考にはなったが、この本は本来、商品として世に出てはならない類いのものである。

●作者が所属している業界言葉が多用され、意味不明なところがたくさんある。さらに基本的なこととして、誤字脱字がかなり目立つ。
あまり本を読まないスタッフのひとりが、あら探しを目的に面白がって最後まで読んでくれたのが印象的だった。

●今はレビューがあるのでたぶん買わない本だが、購入時にはレビューもゼロだったため買ってしまったのだ。新刊書の場合もレビューがないため、失望リスクは高くなる。ただ、時にはレビューは高評価なのに途中で読むのをやめてしまう場合がある。

●最近では『三行で撃つ』(近藤康太郎著)が不評だった。朝日新聞でもコラムを書いていた著者なので文章はとびっきり上手い。さすがプロだと思わせる凄みがある。Amazonレビューもすこぶる良い。

●だが、プロがプロ志望者に向いて書いているだけに読み手を選ぶ
「なにこれ、どういう意味?」と首をかしげる箇所がでてくる。単純に単語が難解で理解できないところがでる。
「意味ぐらい自分で調べてわかるようになってほしい」という事かと思う。だが、実用書で難解な単語がしばしば出てくるのは解せない
そういう点で「朝読」には不向きだったため、スタッフの総意で読むのを途中でやめた。

●頻繁にでてくるのが「〇〇については第5章で詳しく解説するが~」「△△については第2章でも解説した通り~」などの言い回し。
ノイズでしかないこの表現が何度も多用されていた。要所ではこうした解説も効果的だが、頻繁につかわれると鼻につく。

●私も自分のセミナーやYouTubeで同様のことをするが、一回のセミナーで二度までなら許容範囲だと考え、自覚しながら使っている。
おそらく本の作者は癖でこれをやっているのだと思うが、編集者は気づかなかったのだろうか。

●この作者は文章術に関する私塾を運営しているそうだが、おそらく私塾の内容を本にしたのだろう。作者を私淑する塾生を相手に書いた本だと思うが、作者のことをまったく知らない人が読むことを想定してほしかった。

●ただ、大変鋭いことを言っている。
「朝読」には不向きだった本でも、文章術に磨きをかけたい者としては気になる内容だ。
禁書を開くようなつもりで、ひとりでこっそり最後まで目を通してみようかと思い始めている。

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