■人気シリーズでも大コケする
●先週末、映画『怪物』(是枝裕和監督)を観てきた。
黒澤明監督の『羅生門』的な構成で、ひとつの事実を多面的にとらえる作品である。
その過程で数々の謎が回収されていく。
意外な事実も判明し、「え、そうだったの?」と驚くあたりは『カメラを止めるな!』的な要素もあって楽しめる。要所では坂本龍一のピアノで作品に重厚さを加えており、
もう一度味わってみたくなる作品だった。
●カンヌ映画祭では脚本賞とクィア・パルム賞(性的マイノリティを扱った作品に贈られる)を受賞するなど高い評価を受けたせいか、土曜日の劇場はほぼ満席だった。
●公開されてまだ10日。
ご覧になっていない方のほうが多いと思うので内容についてはこれ以上触れないでおこう。この映画は予備知識なしで観るにかぎる。
特に学校の教育現場のシーンでは隠ぺい体質で無気力な校長や担任など、まるで死んだ目をしているようにしかみえないわけだが・・・。
いい役者ばかりですね、今回の布陣は。
●コロナあけの映画館にファンがもどってきたようだ。『コナン』や『マリオ』といった話題作がいずれも大ヒットし業界が活気づいているわけだが、個人的には今月末に公開される『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』に期待している。
●81歳になるハリソン・フォードがインディを演じるのはこれが最後だそうだ。カンヌでのスタンディングオベーションでは感極まっていた彼。私も彼の勇姿を目に焼きつけるつもりだ。
●ただ、興業という点では人気シリーズといえども成功は保証されていない。前作までヒットを続けていたシリーズが突如コケることがある。最近では2019年に公開された『ターミネーター:ニュー・フェイト』が世界で大コケした。
●気になるのはディズニー作品のコケ率が高いこと。
『ムーラン』や『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』は歴史的な赤字を記録し話題になった。
先週公開されたばかりの実写版『リトル・マーメイド』も本国アメリカ以外では不評で、
早くも赤字が予想されている。
「最近のディズニー映画は何か変」というファンがいるが、ディズニーに何かが起きているのだろうか。
●またシリーズものではないが、前評判はすごかったのに興行的にはサッパリというものもある。実写版の『キャッツ』は、すごい脚本、すごい俳優陣、すごい制作予算で作られたものの大赤字のまま公開を終えた。どこをどう見ても失敗するはずがない作品に思えるものは、かえって関係者に慢心を生んで大間違いを仕出かすのかもしれない。
●果たして、6月30日『インディ・ジョーンズ』、7月21日『ミッション:インポッシブル』とつづく超大作のシリーズもの。興行的にどうなるのかは、作品をみればすぐに分かるはずだ。