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「ホテル穂高」での春合宿

「ホテル穂高」での春合宿

●先週末は雪の『ホテル穂高』で読書合宿。今年最初の合宿である

新穂高ロープウェイの乗り場から徒歩1分と最高のロケーションなのだが、私にとってここは初めて利用させていただく宿となる。
硫黄泉と単純泉の両方が湧く。バス停の真ん前がホテルなのだが、あたりは硫黄泉のにおいがする。「温泉地に来た」と感じさせる私好みのニオイだ。

●チェックインには少し早かったので荷物を預けてロープウェイに乗った。あいにくの曇天ながら西穂高口の展望デッキからは北アルプスの山々を一望することができた。もちろん槍ヶ岳の穂先もしっかり見えて大満足。ホテル周辺には外食する場所がないため、ロープウェイのレストランで飛騨牛カレーを食べた。

●実は北アルプスの槍ヶ岳には思い出がたくさん詰まっている。
親友のT君が高校入学祝いに槍ヶ岳へ登ろうと誘ってくれた。登山経験がない学生二人の登山を心配する親。しかしT君の入念な登山計画をみて、親も折れてふたりで槍ヶ岳に登った。

●50年経った今でも当時の記憶がよみがえる。とにかく自然環境がひたすら美しかった。空は青く澄み、緑はまぶしいくらいに緑で、清流の水をすくって飲んだ。T君の笑顔が輝いてみえた。

●T君と私はともにサッカー部に所属していた。毎日10キロ以上走り回っていたので体力には自信がある。
燕岳経由の北アルプス縦走を苦もなくなしとげ、槍ヶ岳の山頂に到着した。ふたりでハイタッチし、記念写真を撮っていると、先に来ていた大学生グループの一人の女性がバイオリンを弾き出した。
「アルプス一万尺」だった。

●そうか、この曲の日本語歌詞は槍ヶ岳のことだったんだとそのとき気づいた。
T君は若くして心臓を患い、50歳を前にして死んでしまったが、彼とカラオケしたときはこの曲をよく一緒に歌った。T君との思い出はたくさんあるが、この時の槍ヶ岳登山が最高だろう。

●そのできごとが私の潜在意識に強く残っている。
長男が高校入学をするとき、お祝いに二人で槍ヶ岳へ登ろうと提案した。あまり嬉しそうではなかったが、長男は承知してくれた。
あとになって長男は言う。
「どうして姉の入学祝いはボストン・NY旅行で弟は沖縄旅行なのに、僕だけ苦行みたいな槍ヶ岳登山なの」と。
私としては三人それぞれに最高のお祝いをしてあげたつもりでいる
きっと分かってくれているだろう。

●早いもので長男との槍ヶ岳登山から18年、T君との槍ヶ岳登山からは50年経った。膝を痛めたので登山からいまは遠ざかっているが、それでも今回みたく北アルプスを一望すると血が騒ぐ。

「武沢さま、今夜から雪なので山はみられなくなりそうです」
ホテル穂高のフロント女性はロープウェイを今日利用したのは正解だと言ってくれた。

●彼女の言ったとおり、その夜から雪になった。時期が時期だけに小雪が舞う程度だと思っていたら大間違い。
真冬のような本格的な降雪で山も道路もすっぽり雪に埋もれた。山間部だけでなく、高山市内まで雪に覆われていた。

●遊ぶところがない温泉宿、しかも雪のせいで景色もみられない。おまけに酒は飲まないとなると、他にやることといえば温泉に浸かることと本を読むことしかない。ある意味、読書合宿にはおあつらえ向きだったわけである。

★ホテル穂高 → https://www.hotel-hotaka.jp/spa/

次は6月ごろで場所は未定。

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