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利益額と利益質からみたAmazon株

利益額と利益質からみたAmazon株

●Amazonが収益を大幅に減らし、アナリスト予想も下回ったため、株価が二日で10%下がった。
一方、Meta(Facebookの親会社)の収益も大幅に減ったが「コストダウンに取り組む」と発表したため、一日で20%も値上がりした。

この報道をみてあなたは何をお感じになっただろうか。

●私は、アメリカ人投資家は本当にコストダウンが好きだな、ということを痛感した次第。コストダウンの規模が大きければ大きいほど利益に直結するので株価が上昇する。
その気持ちは分かるが、そこには超短期的視点しかないのが残念だ

●ことほどさように株式市場には短期投資家が多い。
それもそのはずで、大手の投資会社といえども運用責任者はサラリーマン。年単位、四半期単位、月単位で結果を求められる立場だ。悠長な投資スタンスではすぐクビになる。
だからAmazonは「売り」でMetaは「買い」が正解となる

●長期投資家はその逆手をとれば良いのでやりやすい。
長期的な視点で会社をとらえるわけだ。短期筋がせっせと打っている株をコツコツ買っていけばうまくいく。
ただ、単純に短期筋の反対をやれば良いわけではない。短期でも長期でも「売り」が正解という企業があるからだ。

●そこで長期投資家が注目したいのは、利益の質を評価する発想。
利益が前年比○○%増えた(減った)と騒ぐのではなく、利益の質に着目するのだ。

●堺屋太一氏が『組織の盛衰』で書いている”三比主義”からの脱却という説を私は気に入っている。
三比主義とは、「前年比」「他社比」「予算比」の3つである。この3つの業績評価こそ、悪しき拡大志向の表れだと堺屋氏。何かの比較で利益を論じるのではなく、利益の質を問えというのだ。

●そこで堺屋氏はこんな公式を編み出した。

利益質=利益額×継続性×外延性×好感度

この公式にそって利益質を吟味すれば「質の良い利益」なのか「質の悪い利益」なのかが分かるという。

●「継続性」とは、売上の継続性を問うもの。来期以降もリピートが期待できれば「1.0」以上「1.5」までの係数を掛ける。反対に継続性が期待できなければ「0.9」以下「0.7」までの計数を掛ける

「外延性」とは、顧客の多くが他の自社製品・サービスを買ってくれる可能性があれば「1.0」以上「1.5」を、そうでなければ「0.9」以下「0.7」までを掛ける。

「好感度」とは、売り手も買い手も気持ち良く取り引きできれば加点を、どちらかが不快に思っていれば減点するわけだ。

●仮に前期の経常利益額が3,000万円だっとしよう。
継続性0.7、外延性0.7、好感度0.7だった場合、次のようになる。

利益質=3,000万円×0.7×0.7×0.7=1,029万円。

反対にすべてが加点されるなら次のようになる。

利益質=3,000万円×1.3×1.3×1.3=6,591万円。

利益額は同じでも利益質の差は6倍以上になるわけだ。

●また「継続性」のなかには、その利益の再現可能性も考慮すべきだろう。リストラしまくって絞りだした利益は再現性に欠ける。きちんと先行投資もおこなった上で出した利益には価値がある。

●たとえば、人材投資・DX投資・環境投資・設備投資・研究開発などの費用を充分にかけた上での利益ならば来期も継続して利益を上げられる可能性が高くなる。そうした投資資金の有無や投資の内容も吟味していくと、私にとってAmazonは「売り」ではなく「買い」になる。
なぜなら、Amazonはどの会社にも増して研究開発や先行投資にお金を投じているからだ。一般経費はギリギリまでコストダウンしながら、必要な投資は大胆に行う今の文化がつづくかぎり、Amazonは強いとみている。