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パーパス経営と理念経営

経営管理の手法には時々ブームがおきる。
品質管理(QC)、小集団活動、ベンチャーブーム、バランススコアカード、成果主義人事、ISOシリーズ、コンピテンシー、ゲーミフィケーション、ティール組織、SDGs、ESG、サステナブル・・・etc.
どこかの誰かが意図的にこうしたブームを起こしている可能性も大ありだ。

こうしたブームの中には経営の常識として根づいたものもある一方で、一過性のブームに終わってしまったものもある。
そして最近、大きなバズワードになっているのが「パーパス経営」
Amazonでも関連書籍が10冊以上出ているが、今後もっと普及するのではないかと思っている。

この言葉に初めて触れたときは「なにを今さらパーパス経営だ」と否定的な気分だった。
「ちゃんちゃらおかしい。日本には半世紀前から理念経営があるんだ」と反発したい気分だった。
だがパーパス経営の本を読んでみると、意味合いがかなり違っていて驚いた。
理念経営よりもう一段進化していたし、時代が要求しているのがパーパス経営なんだと肯定的に受け止めるようになった。

経営理念とは「我社が大切にしている考え方やあり方」のこと。
その内容は社会性・科学性・人間性を包含しているのが望ましいが、極端にいえば「この指止まれ」の指はどんな指だってよい。

有限会社がんばれ社長の経営理念は、

「日本の元気を社長から。がんばれ社長は日本の社長を元気にします」

というものだ。
これは視点が社会に向いている理念といえる。

京セラの稲盛さんは会社設立当初、かなり独り善がりの経営理念を掲げていたと告白しておられる。
その後、社会性と人間性をつよく意識したこちらの理念に改めた。

「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」。

「借金返済、借金返済、借金返済」を理念に掲げようとしている社長がいた。
たまたま事前に相談されたので私は猛反対し社長は渋々その案を引っ込め、「効率性の徹底追求」といった理念に変更された
私はその案にも首をかしげたが、社長はこれ以上譲りそうもない。
そこで私は提案した。
「当面はこれでいって、次の段階ではお客さんにも自慢したくなる理念をお考えください」
一事が万事、経営理念は会社が本気で思っていることであれば内容は何でもよかった。

だが「パーパス」はそういうわけにはいかない。
正解・不正解がある。
SDGsやサステナブル全盛の今、社会に対してどのような積極的貢献を果たすのかを宣言したものが「パーパス」だ。
「借金返済」「効率性追求」を経営理念に掲げても誰も文句はいわないが、それをパーパスだと言い張ると批判されるだろう。

社会に存在する意義や目的を掲げたものがパーパスだ。
しかも我社固有の価値を表明する必要がある。
従来からある経営理念に加えて新たにパーパスを掲げてもよい。
むろん、理念とパーパスが一緒になる会社もあるだろう。
いずれにせよ、今後「パーパス」のない会社にはお客だけでなく人もお金も集まらなくなる可能性がある。
心しておこう。