実話ベース物語

その炎上、本当か?

愚民化政策という言葉がある。
為政者が国民を「愚民」、つまり政治的無知状態にして政治への批判力を奪おうとする政策をいう。
政治に無関心な若者が増え投票率も低い現状は、ある意味、愚民化政策が成功したといえる。俗にこれを「平和ボケ」と言ったりするわ
だが、平和ボケさせてもらえることをありがたく思うのである。

愚民化政策の代表的な取り組みとして、「3S政策」(さんえすせいさく)がある。
国民の関心をScreen(映像)、Sport(スポーツ)、Sex(性欲)に向かわせるわけだ。

YouTubeやブログ、SNSなどで政治以外の話題で盛り上がることを政治家は喜ぶ。
平和ボケした話題で国民が盛り上がり、時に炎上したりしてくれたら政治の話題はその分だけおろそかになる。

刺激的で好奇心をそそられる話題であれば何でもよい。
炎上しているような話題があると野次馬根性を発揮して皆、その炎上に加わる
2020年4月に放送されたアニメ「サザエさん」も炎上した。
野家がGWに動物園に出かけるという、よくある内容だった。
普段なら平和的で楽しげな内容で、誰からも批判を受ける筋合いはない。
だが、この放送が炎上してしまったのだ。

新型コロナウイルスで初めて緊急事態宣言が出され、「ステイホームが叫ばれている中での動物園遊びとは何ごとだ!」というわけだ
たかがアニメじゃないの、アニメで動物園に行って何がわるい。
いう擁護派が多い中、「子どもたちが動物園に行けないのを分かっていながら動物園で楽しそうに過ごす放送は不謹慎極まりない」と言う炎上派が勢いを増していった。

一部のインフルエンサーがそれをネタに拡散した。
すると「たしかに不謹慎だ。今のご時世で動物園とは人々の神経を逆撫でしている」とニュースライターが記事にし、まとめサイトでもその話題を大きく扱ってネット民の歓心を買った。

実は最初に不謹慎だと声をあげた人たちの人数があとで分かった
なんとその数11名。
たった11人の意見が「炎上」扱いになってしまう。
尾ひれが付くだけでなく背びれ胸びれもつくのがネットというものだ。

サザエさんをみて何とも思っていなかった人まで炎上したと聞くと「やっぱりか。私もおかしいと思ってたんだ」と炎上に加わる。
最初はまったく炎上していなかったのに、煽られて炎上していく。

「国論を二分した安部元総理の国葬」と盛んにテレビで言うから本当に二分する。
「米国を分断に追い込んだ○○○」と騒ぐから本当に米国が分断していく。

そうしたメディアの習性を知っていれば賢明な国民は踊らされないはずだ。
サザエさんが動物園に行くことが不謹慎かどうかで騒ぐよりも、自分がこの先どこへ行くかを考えよう。
ネットに限らずメディアというものへの接し方に賢さが求められている。