IT,インターネット

これが新しい姿だと思ってやる

新型コロナウイルス以降、私たちの仕事スタイル、生活スタイルは大きく変化した。
私も毎月数回あった出張は皆無になり、引っ越ししたせいでオフィスへの通勤もなくなった。
その結果、毎月10万円、多いときには100万円使ったこともある交通費がゼロになった。
来客対応のために名古屋駅に借りてあるシェアオフィスもこの1年で利用は1回のみ。
アポの99%はオンラインになった。こんな姿、3年前にいったい誰が予測できただろうか。

アメリカ企業の一部では、オフィスは仕事をする場ではなく、社員が集うサロンになっているそうだ。
それにあわせてレイアウトもデザインも家具も大幅に入れ替えた会社もある。
日本でも在宅勤務を継続する会社が多く、コロナ禍が収まっても社員に出社を求めない可能性もある。
在宅勤務でも生産性が落ちない会社はあえて出社する必要はなかろう。

ただ、移行期には妙なできごとも起こる。
8月24日に行われた岸田首相に対する囲み取材が話題になったのをご存知だろうか。
コロナ感染明けの岸田首相が映ったモニターをたくさんの記者が取り囲んで質問を行うという取材光景。
いかにも奇妙である。
なかにはモニターに向かってICレコーダーをかざし、声を収録している人もいた。

発信者だけがデジタルで受信者は全員アナログって、まるでお笑いコントをみているようだった。
Zoomはもちろん録画機能が備わっているため、録画データを受け取れば済む話なので、どうして首相官邸に出向いてモニター周りに整列し、メモとICレコーダー持参で集まる必要があるのだろうか。

おまけにモニターに映し出された岸田首相の顔色は発色がわるく、緑色にみえた。
一国のトップが行うオンライン取材がこのクオリティなのかと残念である。
カメラやテレビは日本のお家芸。
メイドインジャパンのブランドで世界を席巻したはずなのに、オンラインの分野でこんなことをしていては外国人も日本製を買おうとは思ってくれなくなる。
政治家もその関係者も国を代表して営業しているつもりでオンラインを使いこなしていただきたい。

先日の独演会で志の輔がおもしろいことを言っていた。
1年前、パルコ劇場でやったときは都内のコロナ感染者は3,000人。
大騒ぎして私(志の輔)の前にアクリル板を置いて落語をやった。
ところが今年、都内の感染者が2万人近くになっているのにアクリル板はもう要らないと言う。
どうみてもおかしいよね、と笑いを誘っていたが真剣な顔をして滑稽なことをするのが人間だ。
落語家にとってはそれが格好のネタになるのだろう。

コロナ騒動もそろそろ3年を経過する。
早く元に戻りたい部分もあるが、このまま戻らなくても良いものもある。
戻るにしろ、戻らないにしろ、「これは仮の姿」という気持ちだけは早く払拭し、「これが新しい私の姿」という気持ちで本腰入れてやる必要があるだろう。