IT,インターネット

挑戦者は笑われる覚悟を

8月20日(土)、名古屋市内で会食。美味しい料理と楽しい会話を堪能し自宅でパジャマに着替えたそのとき、iPhoneがないことに気づいた。
「また?」とあきれ顔の家内。よくあるのだ。
家内が私を批難し、あざ笑うのを横目に私は冷静にMacBook Airを立ちあげた。

「iPhoneを探す」をチェックする。
遊びで利用したことはあるが、本気で利用するのは初めてだ。
私のiPhone 12 Proは名古屋駅周辺で点滅していた。
先ほど通った場所ではあるが、料理屋の場所はそこではない。
つまりこれはタクシーに置き忘れたんだと気づき、レシートの番号に電話した。
結局30分後には自宅前まで運転士が届けてくれた。
何度も辞退されたが、無理やりコーラ一本と1,000円札一枚を受け取ってもらいiPhoneは私の手にもどった。

その30分間というもの家内はやきもきしていたが、私の気持ちは泰然自若。
心がまったく動じなかったのだ。
ひとつは慣れているということ、もうひとつはAppleのテクノロジーを信頼しているから。そして日本のタクシー会社と運転士の誠意を信じていたからだ。

これがもし「iPhoneを探す」機能を使っておらず、なおかつタクシーの領収書をもらっていなかったらどうなっていたか。

まずiPhoneを置きわすれたか落としたか盗まれたのかが分からない。
とりあえず料理屋に電話し調べてもらう。
次にタクシー会社に電話するわけだが、レシートがないとネットで番号を調べるしかない。
運悪くタクシー会社の名前を思い出せなかったら名古屋中のタクシー会社に軒並み電話しまくることになる。
時間が時間だけに(午後10時過ぎ)大変だ。
落とした可能性もあれば盗難にあった可能性もあるので最寄の警察にも行くことになる。
考えただけでも気が遠くなり、いっそのことiPhoneを諦めてしまおうかと思いたくなる。
だが、個人情報やカード情報のことを考えるとそういうわけにもいかずまたタクシーを呼んで警察署に向かわねばならない。

iPhoneはもやは財布以上に貴重な存在。2009年7月が私のiPhoneデビューである。
そのときのメルマガ記事がこちら。
みんなに自慢したくてしようがない衝動を抑え、冷静ぶって書いているのがわかる。

<div class=”simple-box4″><p>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■iPhone3GSデビューしました

iPhone3GSが私の手元に届きました。
予約して四日目と比較的早く入手できてちょっとびっくりです。さ
そく昨夜から使いはじめていますが想像以上に良いです。仕事も生
も変わりそうな予感が。iPhone3GSを買うと何ができるか、それも来週
あたりにはメルマガでご紹介できると思います。
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スマホデビュー。
家内や子どもたちに自慢したが、意外なことに反応が薄い。
ガジェットに興味をもってもおかしくない高校生や大学生なのに冷ややかなリアクションだったのだ。

  • なにそれ?画面も剥き出しだし、指紋だらけ。指で直接触るなんて不潔じゃない
  • なんだか動作が遅くね?ボクだったらイライラする
  • カメラの画質が悪いし。え、赤外線もないの?
  • なんでこんなにでかくて四角いものを耳にあてて電話しなきゃなんないの

「スマートフォンとはこういうものだ」と力説する私をあざ笑いながら「ケータイの方が便利」と彼ら。
ケータイ全盛、iモード全盛の時代だった。
しかもデジカメは一人一台くらいの勢いで普及しており、スマートフォンが入り込む余地はないように思えた。
私はあざ笑いを受けながらも毎日スマホを使い続けた。

Appleのスティーブ・ジョブズは「イノベーションとは1000のことにノーというものだ」という言葉を残している。
iPhoneを作るときには今までにない機能を追加するよりも、今まであって当然だった機能を捨てる決断を下したというわけだ。
人気漫画の一説に『小市民はいつも挑戦者を笑う』というものがある。
私の家族はジョブズと私の挑戦をあざ笑ったわけだ。

あれから13年経った。
家族全員がiPhone信者になった。
いまではだれもスマホを批難したりあざ笑ったりしない。
iPhoneを置き忘れてくる私をあざ笑うくらいが関の山だろう。