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裕次郎がキムタクより若い?

週に2~3回通っていたホットヨガスタジオが突如閉店したのが三年前の2019年6月。
その直後にコロナ禍が襲ったこともあり、運動から遠ざかってしまった。
昨年秋に引っ越ししてからは通勤移動もなくなったのでこの三年間はまともに汗をかいたことがない。

体重はさほど増えてないが、会った人は異口同音に「太った」というからには、本当にそうなのだろう。
自分でもむくんでいる実感があるが、68歳という年齢も影響しているのだと思う。
時々テレビのCMでどうみても40歳前後にしかみえない人が実は65歳だといって周囲を驚かせているものがある。
家族が「見習え」というが、私は若々しくみえる人をうらやましいとは思わない。

だが先日、長男が私にこう言った。
「お父さんは世間一般の68歳とは思えないよね、顔に若さがある
「え、そうかい。自分の誕生日が近いからって何が企んでるね?」
そう言いながらもやはり内心ではうれしかった。

「ヨイショじゃなくほんとにそう思う。お爺ちゃん(私の父)が亡くなったのはたしか今のお父さんの年齢くらいだった思うけど、そのころのお爺ちゃんはいかにもお爺ちゃんという感じだった。70近い年齢が顔や雰囲気に出ていたもの。お父さんにはそれがない」

「ありがとう。うれしいよ」
正直に言うとうれしい気持ちが7割、ニュートラルな気持ちが3割だった。
横でやりとりを聞いていた次男はだまってタブレットをいじっていたが、「ほらこれ」と一枚の画像を見せてくれた。

人気TVドラマ『太陽にほえろ』のワンシーンを切り取ったもので、主演の石原裕次郎を中心に出演者たちが写っていた。
当時の年齢も書いてある。
どの俳優も老けて見える。
ど真ん中で写っている貫禄充分の石原裕次郎(41)が今の木村拓哉(49)や福山雅治(53)より若いなんて信じられない。

今の世代全体が昔に比べて若くなっているのは間違いない。
栄養事情や医療技術などの向上によってフィジカルの若さが保たれやすくなった。
また老化に抵抗する生き方が主流になり、ジムに通ったり近所を走ったり、サプリメントを飲んだり、スキンケアしたりといった取り組みが広がったせいもある。

さらにいえば生き様の違いもある。昔は年齢相応にみられようと努力した。
人によっては年齢より上にみられたいと思っている人もたくさんいた。
今は反対だ。
若くみられたい、年齢不詳の美魔女にみられたいと思う人がふえた。
理想がかわってきたのだ。

昔、男子は数え年で12~16歳になると「元服」(げんぷく)した。
その日から服装や髪型を大人のものに改め、冠を付けてもらう。
の日を境に幼子としての幼稚さを消して大人らしくふるまうことが求められた。
明治になって元服はあまりみられなくなったが、「成人」「社会人」という概念がそれを引き継いだところがある。
私も「成人式」の日には頭髪を七三に分けてポマードでかためて式典に参加した。
なるべく年齢以上にみられるように努力したものである。

昭和の人たちが老けてみえるのは歳を重ねるごとにそれ相応な服装やふるまいを本人が心がけていたからだ。
50や60になってジーンズを履きTシャツを着る現代。
昔、それをしたら笑いものになったかもしれない。
アパレル業界の努力もあって、大人や高齢者が選べるファッションアイテムもオシャレなものが増えた。
ファッションが様になっていたりすると、「かっこいい」「すてき」と言われる。
若い女性にそれを言われることが励みにもなってその状態を長くキープしようとがんばる。
そういう意味では昔あまり相手にされなかった若い世代が今の大人を動かしているようにもみえる。

この週末、U-NEXTで『日本の首領』という70年代に大ヒットした映画をみたが主演の佐分利信の重厚な演技がすばらしい。
念のためにWikipediaで映画当時の佐分利の年齢を調べてみた。
なんと、今の私とまったく同じ年齢と知って心底おどろいた。
果たして未来の60代、70代はどうなっていくのだろうか楽しみのようでもあり、こわいようでもある。
(峻)