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期待を超えた「トップガン マーヴェリック」

2007年に映画『憑神』(つきがみ)を観た感想をメルマガで書いたところ、ある読者からネタバレ批判を受けた。
「せっかく見るつもりだったのにその気が失せた」とあった。
すぐにお詫びし、「この映画の魅力はあんな小さなネタバレ程度で損なわれるものではありません」と弁明したものの、気まずさが残った。

実はそのとき「ネタバレ」という言葉をはじめて知った。
話の内容を全部明かされてしまったら興味をなくす人がいることくらいは当然わきまえている。
映画や小説などの魅力を語るとき、ネタバレしないようにしつつ語る必要があるが、かなり高等テクニックが必要だ。
なにしろこちらが思う以上に聞き手はデリケートなのだから。

2012年にまたやってしまった。
『鍵泥棒のメソッド』を観てきた日の夜、「何遍もみたくなるタイプの上質な映画だったよ」と感想を話し始めた私。
自宅での夕食時間だったと思う。
「香川照之演じる中年殺し屋がいい味を出してて、最初香川が人を殺す場面があるんだけど、あれは見せかけで、実は・・・」
そのとき息子がさえぎった。
(あ、やっちゃったか)と内心で思った。

「その映画に興味があったのに・・・」と不服そうな息子。
「あ、ごめん。観るつもりだった?」
「聞いちゃったからもういいや、観ない。いいよ話をつづけて」
「いや、やめとくよ」
「いいよ、もう観ないから」
気まずい空気がながれ、息子はその映画を見るのを本当にやめた。
『憑神』から5年、ネタバレ癖は直っていなかったようだ。

だから今日、『トップガン マーヴェリック』の話をするわけだが、緊張している。
でもご安心あれ、話の内容には一切触れない。
トム・クルーズを一躍ハリウッドのスターダムへと押し上げた伝説の『トップガン』(1986年)から36年をかけての続編となった本作。

「この映像体験はCGでは伝わらない。本物の映像でなければ」とトム。
実際に自分も他の俳優も本物の戦闘機に乗って演技する。
無論前作でもトムやほかの俳優たちは戦闘機に乗った。
だが、映画で使えた映像はトムのものだけで、他の俳優たちは嘔吐し、失神した
トムがどれだけのフィジカルの持ち主であるかを物語るエピソードだろう。

今回の作品でも全員が3ヶ月に及ぶ飛行トレーニングを受け7~8Gに耐えられる身体をつくった。
実際のパイロット同様に、曲芸のような飛行をすべて役者はリアルに体験している。

スタジオ内にある模擬コックピットで演技しているわけではない
彼ら・彼女らは実際の戦闘機に乗り、コックピット内に搭載したソニー製IMAXカメラ6台(この映画用に開発された)を自分で操作し、映像をつくった。
俳優は当然ながら飛んでいる間は映像を確認できない。
地上に下りてチェックして、ディスカッションし、また飛んで再撮影するのくり返しだったという。

コックピットに乗せるカメラに期待される性能もすさまじい。
「時速600マイル(約965km)のスピードと8Gの負荷、37,000フィート(約1万1277m)の高度に耐えられる耐久性」というものだった。
その要求にソニーの技術陣が応えた。

撮影には米国海軍の協力も必要になる。
幸い1986年の前作をみて入隊した人たちがいま海軍の幹部になっており、すすんで協力してくれたという。

先日、プロモーションのため3年10ヶ月ぶり、24回目の来日を果たしたトム。
「日本に特別な絆を感じる」と語るトムだけに今回も記者会見を前倒して始めたり、ファンミーティングでは時間を延長して交流を深めるなど相変わらずの日本愛を示した。

『トップガン マーヴェリック』は映画史に残る作品になったと思う。
案の定というべきか、ヤフー映画の評価も「4.7」と前代未聞の高評価。
メイキング映像がこちらでご覧になれるので、興味がなかった方も、まずはこれだけでも見ていただきたい。