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O運輸の社員の集団辞職騒動

O運輸の社員の集団辞職騒動

●以前、経営相談のあった会社の話題をしたい。
個人名や業種、地域などは変えてご紹介する。
愛知県で運送会社を営む従業員数40名の会社で社員の集団辞職騒動があった。
動転したO運輸のO社長(48歳)はあわててこんなメールを私に送ってこられた。

・・・
武沢さん、大変なトラブルが起きました。
かねてより問題視していた社員がいるのはご存知ですよね、彼が首謀者になって他の15名の社員を引き連れ今週一杯で集団辞職すると言ってきたのです。
首謀者の話によれば、彼らだけで新会社をつくり、当社の主力取引先の一社の仕事を全部引き受ける話がついているといいます。
もし全部本当なら、うちはつぶれます。
何とか阻止したいのですがどんな対応をすべきかアドバイス願えないでしょうか。
・・・

●O社長とはある異業種交流会のパーティでご一緒し、趣味がお互いに歴史小説好きであったことから意気投合した。
特に木曽義仲の事に関してはプロの研究者並みに詳しいことからメールを何度かやりとりをし、私のメルマガもお読みいただいていた。

●結局、このときは労働争議につよい地元の弁護士を探すのが一番ですよ、とご提案した。
ここまで事態が進んでいるとコンサルタントの出番は終わって弁護士が必要だ。
首謀者をそこまで攻撃的にさせたのはO社長の責任といえるが、社員と顧客を引き連れての退職・独立は損害賠償請求の対象になる。
また、わずか一週間で強行に辞職することも規則違反として訴訟の対象であることなどを弁護士は首謀者に訴えた。
結局は退職時期は一ヶ月後、同時退職者は6名になった。

●就業規則には「退職の申し出は一ヶ月前」と明記してある。
民法においても「解約申し出の定めがない場合は二週間前」となっている
労働争議になった場合は民法の「二週間」が適応されることが多いらしいが、それにしても今回の「一週間」は認められない。

●また就業規則のなかで「社員の引き抜き」は禁止事項に入っている。
首謀者の訴えは、「会社からひどい仕打ちをされたからその仕返しをしただけ」らしいが、仕返しだとしても許されない行為がある。
法の許容範囲を超えてしまうと、不法行為と見なされるのでそれはあなたがかえって損をすると弁護士が諄々と説いた。

●「退職後の競業禁止」という項目も就業規則に明記されていたが、これは効力がある場合とない場合がある。
時間をかけて培った企業ノウハウや、機密データなどを知りうる立場にあった人なら競業禁止義務は当然だろう。

●だが配送トラックの運転士が退職して他社に転職することや自分で独立することを止めることはできないと考えて良い。
「競業の禁止」という縛りは、社員がどのような立場だったかによるのだ。
今回の場合は、首謀者を含む6人全員が「独立」ではなく同業他社への転職というかたちで決着がついた。

●弁護士の力を借りてなんとか最悪の事態を免れたO社長だが、やれやれと安堵している場合ではない。
なぜこのような事態に陥ったのか、どうすべきだったのかを今後のためにきちんと総括しておく必要がある。
その部分は私の出番なのでサポートさせてもらった。
機会があればそのときのO社長の再発防止策についても触れる機会があるだろう。