謎の言葉で人を思いとどまらせる

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謎の言葉で人を思いとどまらせる

●仮にあなたが経営コンサルタントとする。クライアントの書店が万引き被害に苦しんでいた。無論、監視カメラは設置済みだし覆面警備員を配置して万引き現場を押さえる取り組みもしている。取り組みを始めた当初はそれなりに結果がでるが、やがて裏をかかれるようになる。万引きの手口が巧妙化し、結局は毎年一定の被害が出てしまうという相談だ。

●万引き被害は年間で数千万円ほど。これを3割減らすことができたら社員のボーナスを2倍にできる。さらにはコンサルタントのあなたの報酬も2倍にできる。だからぜひ知恵を貸してほしいと真剣な社長。

●さてあなたならどんな知恵を授けてあげられるだろうか。
「Amazon Go」みたく無人店舗をつくる手もあるが、大きな設備投資は行わない前提でお考えいただきたい。

●実は昨日読んだ朝日新聞デジタルに興味深い記事があった。それによれば、愛知県警のある警部が発案した方法を地元の食品スーパーで試したところ、万引き被害が半年で3割も減ったというのだ。大学教授の本がヒントになっているというのだが、それはどんなものか。

●万引き現行犯をつかまえるのが目的ではない。万引きするのを思いとどまらせるにはどうしたら良いかを考えた。参考にしたのが大阪大学の松村真宏教授が提唱している「仕掛学」。できる警部は勉強している。

●松村教授の「仕掛学」とは、人がつい行動したくなるような仕掛けを研究しそれを施すことで狙った行動が引き出せるというもの。
たとえば、男性用の小便器に付けられた的。あれのおかげで飛散が押さえられる。
あるいは敷地内にゴミを捨てられて困っていたら、その場所にミニチュアの鳥居を設置してゴミ捨てを思いとどまらせるなどが「仕掛学」だ。

★仕掛学
https://ganbare.biz/comon/bitl

●現役の警部が松村教授の本を読み、教授に相談して万引き対策を練った。お金をかけて実際に防犯カメラを張りめぐらすことより、万引き対策をしていることを教えればよいわけだ。
その食品スーパーでは、「万引き防止　実験！！」「防カメピント調整」など謎の言葉をカードにして店内の売り場にたくさん置いた。
あえて意味不明の謎めいた言葉にすることで犯人に新手の対策が講じられていることを匂わせたのだ。
その効果は絶大だった。

●愛知県警のこの事例が有名になり、大阪府警や警視庁からも問い合わせが入っているそうだ。だけどあまり知れ渡っては万引き常習者にも知られてしまうのではないかと心配になる。それにしてもこのアイデア、アレンジすればいろんな応用が利きそうだ。

私が読んだのはこちらの朝日新聞の記事。会員記事なのでご覧いただけない可能性もあるが一応リンクを貼っておく。

★朝日新聞記事
https://digital.asahi.com/articles/ASP6S5GVLP6SOIPE01F.html?ref=tokai_mail_top