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まず「事前検死」する

まず「事前検死」する

●「アミエルの日記」(岩波文庫)の一節。

『人生の行為に於いて、習慣は主義以上の価値がある。何故かといふと、習慣は生きた主義であり、肉となり、本能となった主義である。ある者の主義を改造するのは何でもない。それは書物の題名を変えるほどのことに過ぎぬ。新しい習慣を学ぶことが万事である』

●このアミエルの言葉を拡大解釈していけば、経営理念や将来のビジョンよりも、今の習慣の方が大切である、ということになる。
さらにアミエルは続ける。

『我々の主義なるものは恐らく我々の欠陥に対する一種知らずしらずの弁護に他ならないであろう。我々の目から自分の未練をもつ罪業を隠蔽することを目的とする大見栄に他ならないであろう』

●目標や計画を一新して気持ちをリフレッシュさせ、さあやるぞとなってもそれは一時的なまやかしに過ぎない可能性がある。
経営計画のセミナーのあとで参加者が「もうできたような気分です」というが、まだ何も出来ていないのだ。
始める準備をしただけのことである。

●どうしたら「できたような気分になる」錯覚を防げるか。
有力な手段は今後待ち受けている障害や困難を列挙することだ。
のような問題や課題が横たわっているかを事前に知れば知るほど、安易な気分は吹き飛び、現実の厳しさを実感する。

●心理学者ゲイリー・クライン博士の「事前検死」というやり方はそれをチームで行うものだ。
プロジェクトが始まる前に「我々はなぜうまくいかなかったか」をチーム内で話し合うのだ。
「なぜうまくいかなかったか」のほうが、「どうすればうまくいくか」より意見が出しやすい。
小さな懸念事項まで全部だせばよい。
そのあとから懸念事項や不安材料を消していけばよい。
やりたくないからこんなことをするのではない。
プロジェクトを強化するためにこれを行うのだ。

●普通、問題点を指摘したり課題をあげつらうことはネガティブだといって嫌がられる。
だが、ネガティブな要素を前もって知り、その克服策ももっていることで真のポジティブがうまれる。
空元気ほどむなしいものはないことはメンバー全員知っているのだ。