昨日の読書セミナーにて

昨日の読書セミナーにて

●昨夜「オンライン多幸の会」の5月例会を行った。テーマは「読書」。
講師の白川博司先生と私がそれぞれ30分ずつ「我が読書論」を語る予定でスタートした。
10数名の参加者がまず自己紹介する。
読書遍歴も全員にお話しいただくことにした。

●そこで”事件”が起きた。
一般的には事件でもなんでもないわけだが、みずから読書家を自認する私にとっては”事件”以外のなにものでもなかった。

• 月どの程度本を読んでいるか
• 学生のころどんな本を読んでいたか
• 人生や仕事に影響を与えた本は何か
• 好きな作家はだれか、その理由は
• くり返してよみたくなる本はあるか、それは何か
• Kindleと紙の本、その比率はどの程度か
• 最近一番面白かった本は何か

などについて自己紹介のなかで全員が語ったわけだが、その内容たるやお見事なもの。
講師として話す前の私が圧倒され、話すことがなくなってしまったのだ。

●ある人は中学生の時に三島文学に熱中し、親にかくれて三島の本を読みあさった。
特に『仮面の告白』は布団に隠れて読んだが、中学二年生がこんな大人の告白を読んでいて良いのか、そう自責の念にかられながら読みふけった読書の快感は忘れられないと語った。
それを聞いていた別の人が発言をもとめ、僕も三島は大好きだが、僕のなかでは『金閣寺』がベストだ、と語った。

●今年65歳になったある人は、今読んでいる本がこれまでの人生で一番面白い本であり、すべてにおいて圧倒されると語った。
それは『古事記』である。古事記のどこがおもしろいのか、なぜおもしろいのかを語った。
国学の基礎ともなった古事記を読むことで、日本人としての誇りや自信がここから生まれてくるのだと語ってくれた。

●ある人は、集中読書タイプ。読みたい本を数冊カバンにいれて近所のファミレスに行く。
飲み放題のコーヒーをおかわりしながら数冊の本を読み終えるまでファミレスを出ない。
そうしたことを月に何度か行うので月間で10冊以上は読んでいる。

●ある人は「これと決めた作者の本は徹底して追いかける」と言う。
三島由紀夫や司馬遼太郎の訃報に接したとき、「あぁ、これで彼の新刊本はもう読めないのだ」と淋しく感じた。
沢木耕太郎、開高健、司馬遼太郎、この三人については全作品読んだ。
沢木だけは存命なので新刊本が読める楽しみが残っている、と語る。

●ある人は『坂の上の雲』と『竜馬がゆく』を10年に一度読んできたという。
最初は29歳のとき、次いで39歳、49歳、59歳、69歳、ときて、再来年79歳になるがまた読むという。
自分が置かれている状況がかわることで本の印象がこれほど変わるのかと驚くほどだ。
そういう本をもてることは幸せなことだろうと語る。

●『正法眼蔵随聞記』を読んでいる、ドラッカー作品に絶大な影響を受けた、浅田次郎は高校の先輩で校門に石碑が飾ってある、・・・。

そんな読書猛者の面々にむかって何の読書論を語れというのか。
そうだ、今夢中になっている本について語ろうと思い、島崎の『夜明け前』を語り始めた。
すると、その場にいた三人はすでに読了していて一人の方は本を片手に舞台となった妻籠・馬籠を旅してきたと言う。
私は話すことがいよいよもってなくなり、スピーチを10分で終えた。
その後は徹底的に聞き役に回った。

●正直いって驚いた。
今も驚いている。
皆さんがそんなにたくさん本を読んでいることに。
こうした椿事もライブの魅力である。
だが今後、メルマガで読書について語るときには、そういう人たちを相手にしていることを思い出さねばならない。

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