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中国紀行 その1

20年ぶり2回目の中国訪問から昨日帰国した。「鉄の胃袋」を自認してきた私だが、3日目に何も喉を通らなくなってしまうという不覚もあった。しかし、中国という国のふところの深さに充分ふれることが出来たと思う。

これは、仕事先のD社が中国の常州や雲南省へ訪問するのに同行したもの。
公式行事とプライベート行事に分けて、気づいたことを書いてみよう。
今日は公式編。

改革開放政策を推し進める中国では、「省」や「市」などの行政が総力をあげて外国企業の誘致や現地企業との提携、合弁の設立、研修生の派遣事業などに取り組んでいる。

ここ江蘇省常州市も例外ではなく、大阪の高槻市や埼玉の所沢市と友好姉妹都市になっている他、多くの都市や企業と密接な関係にある。
著名なところでは、東芝や富士通などが現地に合弁企業を設立している他、ユニクロもここ常州で生産している。上海市の北西、南京との中間に位置するここ常州は産業と観光の街だ。
http://96000.com/jp/area/jiangshu/map.htm

今回6日間にわたって我々7名に同行して下さったのは、常州市の科学技術交流センターの要人だ。

愛知県名古屋市に本社を置くD社は、岐阜県可児市に工場を持ち、同工場で中国研修生の受け入れを10年以上継続してきている。
D社と可児市の商工会議所および常州市は、お互いに手探りの状態で始めた派遣事業が今や完全に軌道に乗った。毎年定員の10倍ほどの人数が、日本で働くことを希望しているという。
書類選考や現地での一次面接というフィルターにかけられた人材の中からD社の役員が常州を訪れ、最終面接して選考するシステムも出来上がった。

私も日本で働くことを希望する若者(20~30才代)の面接試験に立ち会った。
まず彼らは、自分の経歴や日本で働きたいという意思表示を日本語で語る。きっとこの面接のために猛特訓したものに違いない。
彼らはなぜ日本に来たがるのか。それは、三つあるようだ。

まず技術。多くの部分ではまだまだ日本の技術優位性は高い。彼らが身につけた高度な技術は、帰国すると、それだけで昇進や昇給の対象になることが多いという。

第二に、給与。中国企業で働いているときに得ていた15000円ほどの月給が70000円にはね上がる。日本で一年働いて貯金すれば、2~3年分の年収を貯金することも可能で、事実、そのような研修生が少なくないそうだ。そのかわり、日本にいるときの生活もいたって地味で、300円の仕出し弁当も高いから取らない。自前の食事で済ますという。

第三に、ビジネスルールだ。我々が当たり前だと思っているビジネス常識や経営管理手法が彼らにとってすべて勉強の対象となる。

一方、研修生を受け入れる日本企業のメリットは何か。
目に見えるメリットとしては、人件費の抑制効果だろう。日本人の半分~1/3で、やる気のある人材を一定期間雇用することが出来る。それはそのまま国内でのコスト競争力にも反映される。言葉の壁もあるが、双方が努力すれば問題ではなくなる。

第二に、中国自治体とのパイプが強化されることによって多くの企業や経営者との出会いや交流などの機会が増え、ビジネスチャンスが多くなる効果も見逃せない。

光があれば影もある。決して良いことばかりではない。過去においては、事件や事故もあったと聞く。しかし、一つずつねばり強く解決してきた結果、予防策や対応策もかなり進んできているのだ。
日中双方の情熱と根気があってこその交流事業だろう。

明日はプライベート編。ベトナム・ラオス・ミャンマーなどと接する雲南省の昆明や麗江を訪れ、そこで働くツアーガイドの話から気づいたことをご紹介する予定。
また、戒厳令下にあるようなAPEC開催中の上海の夜もご紹介してみたいと思う。幸か不幸か、ブッシュ大統領が宿泊したホテルの前が私たちのホテルだった。APEC会議の真っ最中に上海入りしたのである。