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「デシャンボー革命」の余波

「デシャンボー革命」の余波

●ブライソン・デシャンボー選手がゴルフ界に革命を起こしている
アメリカの、いや、世界のゴルフ界は彼の話題で持ち切りだ。

「どうしたらゴルフで勝てるか」
その一点に戦略を絞った結果、肉体の改造でパワーを付け、アイアンのクラブシャフトの長さをすべて統一するなど、従来の常識を次々と覆していった。
一般的なアイアンクラブはボールを飛ばす距離に応じてシャフトの長さが変わる。
私も昔はゴルフクラブを売っていたので、そんなことは当たり前すぎるほど当たり前のこと。

●だがデシャンボーは、私でも知っている常識を覆した。
クラブの長さが異なればミスが起きやすくなる。
だったらすべて長さを統一して、フェイス(ボールが当たる面)の角度だけを変えれば飛距離の差は付けられるはずと考えた。
そして、そのようにクラブを改造してプレイした。
アマチュア時代のことである。

●周囲は笑った。
肉体だけは確実にマッチョ化していくが結果が出ない時期が続いた。
元プロゴルフ選手だった父は息子の支援者だったが、息子の妙な取り組みに愛想をつかし、ついに父子の関係すら断絶してしまった。
父としてはあきれる思いだったに違いない。
親として恥ずかしいからやめてくれ、という気分だろう。

●親子断絶しても自分の仮説を信じたデシャンボー。
必ずこのやり方で成功できるはずだ、と。
そしてデシャンボー選手は結果を出した。
2015年に全米アマと、NCAA全米学生の両タイトルを獲得し、翌年にプロ転向したのだった。
そしてプロ5年目の昨年、全米OPでついにメジャー初制覇をなし遂げたのである。
やがて父も認めてくれ和解した。
それどころか父は自分のゴルフクラブの長さを統一した。

●クラブもスイングもコースの攻略法もパッティングも、すべて他の出場選手と違うデシャンボーの優勝は他の選手に衝撃を与えた。
肉体改造とクラブ革命、スイング革命は、コース攻略の常識も変える。
少し遠くても打ちやすいフェアウェイを狙うのがコース攻略の常識だが、デシャンボーは一直線にピンを狙う。
途中のラフにつかまろうが、ラフから平然と強いボールを打ち出せるパワーがあるからだ。

●「マネるな危険」、彼のやり方は強靱なフィジカルがあるからできる芸当だ。
だがアマチュアほどそれを真似たがる。
ゴルフ用品店ではクラブの長さが統一されたクラブセットが新発売された。
デシャンボーがゴルフ界に与えた影響ははかり知れない。

●こうした周囲の騒動がありながら、他のトッププロたちは平然としている。
世界ランキング1位のD・ジョンソン選手は、「自分がベストのプレイをしても勝てないのなら何かを変える必要がある。でも今は自分のゴルフができれば勝てる自信がある」と余裕のコメント。

●しかし、トッププロでも勝利から遠ざかっていた選手のなかには、デシャンボーのやり方を真似る人がでた。
R・マキロイ選手(英国)もそのひとりだ。
デシャンボーのゴルフを目の当たりにしたマキロイは肉体改造に取り組みパワーアップを計ったのだ。
その結果は如実に表れた。
飛距離が一段と伸びたのだ。
だがスイングが崩れてしまった。
当然、スコアも崩れるようになり、予選落ちが続いた。
「自分には向いていなかった」とデシャンボーの真似をやめることにしたが、まだ元のスイングに戻らないという。

●挑戦したことを批判されたマキロイ選手。
勝つためには何でもやってみる。
ダメだったら元に戻せばよいだけだ。
そう考えるマキロイ選手を本当に批判できるのだろうか、と私は言いたい。
たとえ、元のスイングに戻るのに時間がかかったとしても、挑戦してみる価値はあると思えば挑戦する。
オトナのコメントを発したD・ジョンソン選手より、トッププロでありながらもモノマネしようとしたマキロイ選手の方が私は好きだ。

●デシャンボーとジョンソン、それにマキロイ。
今シーズン彼らのゴルフがどのようなものになるのか、あまりゴルフを見ない私でも注目したい。

来週4月8日、世界が注目するマスターズトーナメントがオーガスタナショナルコースで開催される。

★マスターズゴルフ2021
 ⇒ https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/s1877/


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