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お客さん、巻き戻してから返してくださいよ

お客さん、巻き戻してから返してくださいよ

●「デジタルフォーメーション」「デジタルトランスポーテーション」など、まだ誤用が多いDX(デジタル・トランスフォーメーション)。
トランスフォーメーションには「変形」「変質」「変容」という意味がある。
デジタルによって私たちのビジネスや生活を変質・変容させる取り組みがDXなのだ。

●DXは特別むずかしいことではない。DXでより便利に、より豊かになった例はいくつもある。
たとえば動画視聴。
昔の動画はアナログだった。

●40年前、ビデオデッキを買うのに一ヶ月分の給料を必要とした
ボーナスをつぎこんで私はそれを買った。
ビデオソフトは一本1万円した。
今の感覚では5万円だ。
毎回ビデオを買うおこづかいがないので、友だち同士でダビングビデオを交換し合った。
画質はかなり劣化するが、自宅でビデオを再生できるというだけで誇らしかった。
なぜなら、それ以前は8ミリ映写機をもっている人の家でした動画が見られなかったからだ。

●そこに忽然とあらわれたのがレンタルビデオ店だった。
ビデオデッキはもっているがビデオを持っていない多くのファンが押しよせた
私はハリウッド映画を好んで借りたが、好事家はAVコーナーに群がった。
1万円のビデオが2泊1,000円で借りられるからありがたかった。
うっかり返し忘れると1泊1,000円だったので真剣にみて真剣に返した。
会社帰りによく利用したものだ。
店主から「お客さん、ちゃんと巻き戻してから返してくださいよ」とよく注意された。

●その後、ビデオがDVDになり、レコードがカセット、CD、MDになった。
レンタルビジネスに革命を起こしたTSUTAYAが全国制覇した
店に行かなくてもすむDiscusのお世話になることもあるが基本的には私は店で品選びをした。
だが、3年前を最後にTSUTAYAで商品を借りなくなってしまった。
今は自宅でNetflix、Primeビデオなどのネット配信を利用する。
これがひとつの典型的なDXだ。

●コロナ禍で一気に普及したテレワーク。
ZoomやChatworkをつかってコミュニケーションをとれば、わざわざ出張や外出をする必要がなくなる。
おかげでZoomもChatworkも業績が大きく伸びた
ある大企業は年間で1,000億円単位の交通費削減を実現した。
めでたしめでだしだが、航空会社や鉄道会社、ホテルや外食産業などはDXによって破壊の危機にさらされることにもなる。
これもひとつのDXだ

●自動車が自動運転に向かっている。
これもDXだが、トヨタを筆頭に世界中の自動車メーカーがDXの波に乗るのか、飲みこまれるのか、ギリギリの勝負を毎日続けている。

●このようにピンチとチャンスが同居するDXだが、賢明な経営者はチャンスととらえているはずだ。
先日、ある建設会社のZoom会議に参加した。
お相手の社長が冗談めかして「武沢先生、DXはどこで売ってますか。うちも力を入れたいので一式セットで買いたい」と言われた。
チャンスにしたいのだろう。

●20年前のITブームが今のDXブームだ。
いたずらに浮き足立つだけで具体的に何をしたらよいのか分かっていない経営者も多い。
その建設会社の社長もその一人だったので、私は「まずこの本を読むべきです」と2冊ご紹介した。

●一冊目はDXの概念を理解するための分かりやすい入門書。
二冊目はDX導入で会社を変えた中小企業社長が書いたDX実務書だ。
どちらも最高におもしろい。

一冊目の本がこちら。
★イラスト&図解でわかるDX(デジタルトランスフォーメーション);デジタル技術で爆発的に成長する産業、破壊される産業
https://amzn.to/3t9yEtp

二冊目の本がこちら。
★DXで生産性最大化、少数精鋭で高収益!地域No.1工務店の「圧倒的に実践する」経営(伊藤 謙著、日本実業出版社)
https://amzn.to/3byQZKu

二冊目は3/25(木)が発売日なので今はAmazonで予約受付中。
私はゲラ刷りを読んだが質量ともに傑作だった。
どちらも図表が多いので理解しやすく、すぐに読めるはずだ。