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新型コロナとビットコインが暗示するもの

新型コロナとビットコインが暗示するもの

●約1000年前、中世ヨーロッパで大いに栄えていた封建制や荘園制はその後、徐々に力を弱めていった。
その最大の要因は貨幣経済の発展だと言われている。
貨幣経済が誕生する前は、物々交換で暮らしていた農民たちが、お金ができたおかげで農作物を市場で売るようになった。
その結果、一部の農民は豊かになり金を蓄えるようになる。
それが富の分散、権力の分散につながり、封建制の崩壊にむすびついていった。

●最終的な決め手となったのは感染病だった。
1347年に起きたパンデミックである。
黒死病(ペスト)の感染拡大は欧州史上最悪の規模となり、ヨーロッパ人の3分の1が命を落とした。
医者がそばにいるはずの領主(騎士)も、力のない農民も、皆平等に死んだ。
疫病の前では権力も無力であることを多くの人が知った。
7,500万人いたヨーロッパの人口は黒死病で5,000万人に減った。

●人口が減ると地価が急激に下がる。
その一方、農民も減るので農作物の価値が上がり、農民はますます豊かになった。
力を付けた農民は農業と農地から解放され、地下が下がった都市へ出た。
そして新たなビジネスを起ちあげた。
小売業、金融業、流通業などの産業が起こり、新興財閥がたくさん産まれていく。
彼らの富が文化人の活動を支え、それが文芸復興(ルネサンス)に結びつき、さらに200年ほど経て、産業革命、そして資本主義へとつながっていく。

●このように、中世ヨーロッパ社会の仕組みを根底から変えたのは、「貨幣の誕生」と「パンデミック」だった。
私は歴史を調べていて、今の状況と酷似していることに気づいた。
中世ヨーロッパの黒死病(ペスト)に比べればいまの新型コロナの致死率ははるかに低い。
菌がもつ殺傷力に違いがあるわけだが、当時と今の医療技術の差も大きい。
ただ、起きていることは一緒だし感染エリアの広さや感染者の数では新型コロナの方が大きい。

●「風邪の一種」「インフルと同じ致死率」と言う人もいるが、そう断定されたわけではない。
あくまで個人の意見であって医学会がそう言っているわけではない。
未知の病であり、即死レベルで亡くなっている人もいることから最大限の予防を講じるべきだ。

●中世ヨーロッパで貨幣が誕生したように、今はネットで仮想通貨が誕生している。
ビットコインは史上最高値を更新し、イギリス規制当局が「すべてを失う覚悟が必要」と警告するほど人気が加熱している。

●貨幣と黒死病が封建制度を崩壊させ、文芸復興と産業革命を招いた。
はたして仮想通貨と新型コロナが崩壊させるものはなにか。
そして、新たに起こそうとしているものは何か。
それを考え、見極めることが大切だと思う。

●とりわけ経営者は、アフターコロナにおける会社のあり方、経営者のあり方、企業と従業員の関係などに新しい答えを求める必要があるはずだ。
一部の企業ではまったく新しい取り組みがすでに始まっている。
近の『日経ビジネス』にもそうした事例が紹介されており、非常に興味深く読んだ。
特に気になった箇所を来週のメルマガでピックアップする予定なので、お楽しみに。