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リーダーの理想的な辞め方二つ

リーダーの理想的な辞め方二つ

●かつての菅直人(かん なおと)総理大臣の印象がつよく残っているので、安倍さんの後がまとして有力な菅官房長官のことも「かん」と呼んでしまう。
正しくは菅義偉(すが よしひで)氏である。

●「木瓜(ぼけ)咲くや 漱石拙を 守るべく」

生き方が下手くそなことをあえて誇った漱石の句である。
政治家にも世渡り上手と下手がいる。
自分の野心を決して言葉にしてこなかった世渡り下手?な管氏が今後、内外の厳しい環境をどうリードするのか注目したい。

●さて昨日のつづき。

「安倍さんがまた自分から突然辞めちゃいましたね。どう思います?安倍さんの辞め方」と床屋の大将。以下、私の考えである。

●大いによろしいのではないか。
花道を飾りつつ、きっちりと後継者の育成と決定も行い、政治的空白を作ることなく退任するのもひとつの理想だ。
だが、もうひとつの好ましいスタイルは「突然辞める」今回の安倍さんのような辞め方だ。
無責任といわれようがどうしようが、待ったなしで後がまが決められ、政治空白を作らないよう皆で知恵を出し合う。
組織と人間を信頼しているからこそできる辞め方が「突然の辞任」だ。

●「代々初代」を家訓に掲げる柏屋(かしわや)は、嘉永5年(1852年)創業の和洋菓子会社。
福島県郡山市に本社があり、現在の社長である本名善兵衛(ほんなぜんべえ)氏は五代目にあたる。
「代々初代」というだけに、絶えず初代の精神で経営にあたる。
業承継もある意味で、「あとはよろしく」的だ。
現在の善兵衛氏が入社してしばらくしたころ、昭和61年の大水害で本社工場が水没した。
しかも当時の業績は悪く、そんななかでの被災
倒産を覚悟しての社長就任となり、新社長の背水の陣の精神が社員と協力業者ならびにお客の協力につながり、経営を復興することができた。
そうした創業の苦労は、きちんとした承継計画に基づいていては得ることができないという同社の先人の知恵なのだろう。

●私は企業の事業承継はそれでいいと思っている。
税金対策という点においては得策とはいえないが、損得を超越した貴重な体験ができるのは、無責任な辞め方である。
5年も10年もかけてじわじわフェードアウトするよりは、突然いなくなって組織全体の経営空白を防ぐべきだ。

●「なるほどね、そういう承継なら私でもできそうです。明日やっちゃおうかな」
床屋の大将は安心していた。
ただ間違いのないようにおことわりしておくのは、すくなくとも一人は後継候補者がいる状態にしておくこと。
ひとりもいないのに突然辞めたら、ほぼ間違いなく事業閉鎖か企業売却に話は進むだろう。
下手をしたら債権者が押しよせるかもしれないのでご注意を。