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続・荒垣米穀店の戦略

続・荒垣米穀店の戦略

※ほぼ実話ですが、組織や個人の名称は仮のものです。

●先週木曜日号のつづき。

ある街に50年以上続くお米屋『荒垣米穀店』がある。
荒垣社長は二代目で今年55歳。
米農家を自らまわって仕入れたお米は通常よりすこし高めだが、お米好きを納得させる味がある。
本店以外に高級デパート『丸大そうご』と、富裕層向け食品スーパー『マルマル・ラクスル』に出店し、業績を伸ばしてきた。

●だが今年、新型コロナの影響で一番売上が減ったのがデパート店だった。
幸い、食品スーパーのテナント店が前年比ふた桁成長しているのが救いだが、このままでは採算ラインを割り込んでしまいそうだ

●武沢のアドバイスでYouTubeチャンネルを立ち上げ、通販サイトも立ちあげた。
あとはコンテンツを増やしていくという段階になった時、「泣きっ面に蜂」のようなできごとが起きてしまった。
現場のエース社員が目の病にかかり、丸一ヶ月も入院することになったのだ。
ギリギリの人数で店を回しており容易に後がまが見つからないことから社長自ら売場に立つことに。
おのずと、YouTubeと通販サイトは完全にストップしてしまった。

●「どうしたらお米が売れるのか」来る日も来る日もそれを考えていた、ある夜、入浴中に亡き父の声が聞こえてきた。

「吉成(社長の名)、商売というのはな、近所に売るのが一番難しいんだ。お隣やご近所が買いにきてくれたら本物だ」

口ぐせのように父が言っていた言葉だった。

●荒垣は子どものころから言い聞かされ、この言葉を鮮明に記憶していた。
それがずっと荒垣の経営課題になっていたわけだが、よりによってこのタイミングでその言葉が聞こえてきたことに意味を感じ取た荒垣は翌日、郵便局に相談にいった。

●郵便局のスタッフは荒垣の相談を聞いて、『配達地域指定郵便物』というDMサービスをすすめてくれた。
個人情報の取り扱いがシビアなこの時代にあって、リストを保有していなくても指定エリア内にDMを届けてくれるという心強い販促手段だった。
荒垣はまず本店で試すことにした。対象エリアは本店から300メートル圏内とし、8月1日から投函を開始してもらっている。

●「○○区内にお住まいで美味しいお米をお探しのあなたへ」と題したハガキで次のようなアピールをした。
このハガキを持参して本店にお越しください。
お米やご飯のお供が通常価格より割引きで買えるほか、「米屋のスタンプキャンペーン」として五キロにつき1つのスタンプを押します。
6個一杯たまると人気のお米を1キロプレゼントします、といった内容だった。

●荒垣は私にメールをくれた。
「武沢先生、こんなタイミングではありますが、やっと先代からの課題に手を付けることができ、緊張感と同時に、少しワクワクしています」

「こんなタイミング」と荒垣は言うが、最高のタイミングだと私は思う。
今こそ矢継ぎ早にあらゆるアイデアを試し、うまくいったものを残すやり方が求められる時期だ。

●メールの最後はこう締めくくられていた。
「これがうまく行くようであれば、デパートでも食品スーパーでも同じ手法で取り組もうと思っています。いや・・・、うまく行くまで工夫を凝らそうと思います!」

「意外にご近所は買わない。隣に売るのが一番むずかしい」という意味深長な先代の教えがいま、荒垣に試されている。

★「配達地域指定郵便物」
https://www.post.japanpost.jp/service/discount/townmail.html

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