「社内のモラルアップと利益確保の実現」をうたい文句に『やる気塾』を全国に展開し、毎年ふた桁成長して会社がある。しかも不況業種の典型、服地卸しの会社だ。
それは、65年の社歴をもつ名古屋の「森島羅紗店」だ。まずは、この会社そのものをご紹介したい。
羅紗(らしゃ)とは、毛織物のことで、古くは戦国武将の陣羽織などにも使われ、現在では紳士服素材の定番だ。
羅紗店とは、毛織物服地をミユキ毛織やオンワードなどのメーカーから仕入れ、専門店や百貨店などの小売店に卸売販売するのが仕事である。
しかし、大型専門店チェーンが価格破壊を武器に急成長を遂げていく過程で、羅紗店は街のテーラーとともに一気に消滅していった。ご多分にもれず、森島羅紗店も18年前に経営危機に陥っている。
当時、ホテルマンとして海外修行を終え、ホテルオークラチェーンの設立業務に携わっておられた深田正雄さん(今52才・当時34才)が社長に就任してからこの会社はよみがえった。
当時をふり返り、深田社長は持ち前の明るい口調でこう語る。
「私が森島羅紗店の社長に就任したのには、いろいろないきさつがあるので割愛しますが、勝算があって就任したわけではない。むしろ、就任してはじめてその実態のひどさに驚いたほどでした。メーカーへの支払いはもちろん、社員のボーナスも払えない状況でしたからね。これはまいった。自社の直接販売だけで会社を再建するのは不可能だと思いましたよ。」
・・・それでどうされたのですか?
「まず、友人に手紙を書きましたよ。バンザイの絵を入れて、助けてくれ~ってね。友達はありがたいですね、たくさん買いに来てくれましたよ。中には100万単位で買ってくれるのもいた。本当にうれしかった。おかげでどうにか年末の危機は乗り切り、さてこれからどうするか、を考えていたときに、ある友人がこう言ってくれた。
『おれにも売らせろよ』
ってね。私はこのひとことでピーンときた。」
・・・どのようにきたのですか。
「お客様に協力していただくしかない。街のお米屋さんやガソリンスタンド、スーパーや建設会社、それぞれの会社がみなお得意さんをもっておられるじゃないですか。そうしたお客様への影響力を利用させていただこうと考えました。それが今の『やる気塾』のルーツです。」
「やる気塾」とは次のようなものだ。
1.まずあなたの会社と森島羅紗店とが接触を開始する。
2.3ヶ月後くらいをメドにイベント販売を計画する。
3.あなたの会社で集客する。集客のノウハウはすべて森島がもっている。
4.集客のための社員教育を継続的に開催する。主催は森島がやる。やる気教育の専門家(販売のコンサルタント)や深田社長み ずからが研修を受けもつ。この部分にかなり力が入っており、人気が高い。
5.2~3日のイベント販売では、森島羅紗店のスタッフがすべて接客販売する。あなたの会社の社員は会場にいて応接するだけ で良い。
6.あなたの会社の収益と経費総売上高の28%(平均値)があなたの会社に入る。経費は、会場代とチラシ代をあなたの会社が負 担する。研修に費やす経費は森島羅紗店が負担する。名古屋の会社なら、森島本社ショールームを無料で使える。
7.顧客への納品と代金回収は森島がすべて受けもつ。場合によっては、納品をあなたの会社が受けもつほうがよい場合もある。
8.業界初のスーツ10年間保証や、こまめなフォローメールなどで顧客満足向上と、次回のリピートにつなげる。
9.製品は百貨店品質だ。また、デザインや採寸は、トラッドが良いとか、ソフトスーツにしたいなどの要望に応じたイージーオ ーダー方式で、顧客ごとのデータが蓄積されている。従って、次回は名前を言うだけで前回のデータがわかる。
10.気になる販売価格だが、百貨店と同じものがノーブランドになるのでかなり安い。青山・青木と百貨店の中間くらいにあた る。
今では年間に数十のイベントがコンスタントに開催されており、合計すると年間200日ほどのイベント開催になるという。