Rewrite:2014年3月26日(水)
『古代への情熱』は、トロヤの遺跡を発掘したシュリーマンの実話物語だ。
お読みになった方も多かろう。彼の夢に賭ける情熱と、68年の生涯を自らのプログラム通りに生きた戦略性から学ぶことは多い。
ドイツ人のシュリーマンは、子供のころに父親から何度も聞かされた「ホメロスの物語」を忘れることができなかった。それは3000年以上も前のギリシャとトロヤの戦争物語だ。まるで神話のような大昔の話だ。やがて彼は「ギリシャに滅ぼされたトロヤの遺跡が必ずある」と信じるようになる。そして、「トロヤ遺跡の発掘」を人生の最終目標に決めた。
それからの彼の行動が現代人と違うところだ。彼は人生を逆算方式で生きることを決意する。
◇最終目標・・・トロヤの遺跡発掘
◇中間目標・・・発掘資金と時間を確保するために莫大な富を蓄積する
◇短期目標・・・貿易商人として成功する
◇手段・・・貿易に必要な語学をマスターする
夢に向けた最初のステップは14歳のときだった。商業学校を卒業し、遠くの村の食料雑貨店で働きはじめたのだった。朝5時から夜11時までコマネズミのように働きながらも、ホメロスの物語を自分で読むために、ギリシャ語の勉強をした。しかし現実は厳しく、勉強のための本を買うお金も時間もなく働き続け、やがて健康を害して退職する羽目になった。
雑貨店をやめたシュリーマン少年は、外国へ行く船のボーイになるが、そこでも彼を待ち受けていたのは「不運と不幸」でしかない。乗った船が嵐で沈没し、丸裸でオランダの海岸に打ちあげられる。20歳になっていた彼の前途には、希望の光は一筋もなかったかにみえた。
しかし、夢をあきらめないシュリーマンにとって、丸裸で流れ着いたオランダそのものが、彼を大商人へと導く大地だったのだ。その後の4年間で彼は18カ国語をマスターし、貿易会社のロシア店を任されるまでに出世する。さらにそこから10年強の期間で彼は大商人となり、トロヤ遺跡発掘のための資金を充分に確保する。
そして36歳から44歳までの8年間、彼は遺跡発掘の前に世界を見ておこうと決意し、世界旅行に出る。江戸幕末の日本も訪れ、彼の著書によれば日本のサムライ精神にいたく感銘を受けているのだが、ここでは余談。
さて、遺跡発掘開始となるのだが・・・。