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目標達成エンジン

Rewrite:2014年3月26日(水)

ある機械部品メーカーのM社長は、半年以上もかけて作った経営計画を発表する日がやってきた。公民館に社員30名と銀行の支店長2名を招き、第一回の発表会をにぎにぎしく開催した。
「今日をもって会社の新たな創業の日とする」「社会のために我々が使命感を感じて仕事をするのだ」などと、社長は熱を入れた発表を行った。社員からの熱い反応を期待しつつ、予定通りにセレモニーが進み、そして終了した。

ところが……。
翌日から、会社は何も変わらない。まるで何もなかったかのように日常業務が行われていく。あれほど心血を注いで作った経営計画書が社員の机の上に無造作に放り出されている。そうした経験をすると「来年も経営計画を作ろう」という気が起きなくなる。実はそこからが勝負なのに。

この会社には新たな挑戦課題があることに社長は気づかねばならない。本来、そのことも経営計画書のなかで計画されていなければならないのだ。それは「目標達成エンジン」と私が呼ぶ、あるシステムが欠けているのだ。
「目標達成エンジン」とは、目標管理を爆弾投下型ではなく、ミサイル型に置きかえるわけだ。

爆弾投下型とは、爆撃機が目標物に向かって空中から爆弾を投下するように、期首において目標爆弾を投下する。途中で風向きが変わったり、目標物が動いてしまったら、爆弾は外れる運命にある。現実の経営においては、外部環境も内部環境も時々刻々変化するわけで、そもそも爆弾投下型の目標管理は適さないのが当然だ。しかしながらこうしたやり方の会社が少なからず存在する。

一方のミサイル型とは最初に目標物をレーダーでとらえてしまう。つまり、ロックオンするわけで、これによって目標物が動いてもこちらも反応して動くので、最後には命中する。経営において目標をロックオンするとは、頻繁に目標と実績との誤差を把握・分析し、対策を打ち続けることだろう。もし、「絶対当たらない」と判断した場合は、やむをえず目標を変更する。下方修正(上方修正)するのだ。だから、最後には必ず目標物に命中するのだ。

社員は社長の本気さを見ている。社長は試されているのだ。ニの矢、三の矢の発信を待っている。それは、発表内容にこだわるための社内体制をどう作るか、という新たな発信である。
PLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(点検)→ACTION(対策)そして、また、PLAN という、「目標達成エンジン」を機能させるための取り組みを始めるのだ。

「目標達成エンジン」は、組織に良い意味での緊張感と秩序をもたらしてくれる。また、「目標達成エンジン」のある会社では、仕事をこなしていくことがそのまま人材育成にもつながる。「目標達成エンジン」のある会社では、社員との目標共有に悩むことがなくなっていく。「目標達成エンジン」の存在は、社長を孤立無援から救っていく。