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勝率とリスク・リワード

今年のプロ野球は全日程を終了し、あとは侍ジャパンの試合を残
のみとなった。
セリーグ優勝のジャイアンツの勝率は5割4分6厘(77勝64敗2分け)、
パリーグ優勝のライオンズの勝率は5割6分3厘(80勝62敗1分け)だっ
た。つまり10試合やれば、6勝する必要はなく、5.5勝ぐらいで優勝で
きるわけだ。

2勝1敗ペースだと勝率6割6分6厘になるが、そんな高い勝率で優勝す
る必要はなく、過去10年では2012年の原・巨人(.667)が一度やって
いるだけ。それ以外はもっと低い勝率で優勝しているのだ。

143試合の長いペナントリーグを戦うときには10試合で6勝4敗、5試
合なら3勝2敗で充分という考え方をすればよい。ただし、注意すべき
はホームとアウェイを分けて考えること。

ホームで強いチームが優勝するからだ。
以下のデータは2005年以降、今年までの優勝チームとホームでの成績
である。これをみると、今年のジャイアンツはホームでもアウェイ
もバランス良く勝っているが、昨年以前の優勝チームは貯金の大半
ホームで作っていることが分かる。ホームでは最低でも6割、できれば
7割の勝率を目ざす必要があるのだ。

<優勝チームのホームでの成績>
2019 読売ジャイアンツ 39-32 .549
2018 広島東洋カープ  45-25 .643
2017 広島東洋カープ 50-20(1).714
2016 広島東洋カープ 51-20(1).728
2015 東京ヤクルトスワローズ 45-26(1).633
2014 読売ジャイアンツ 44-27(1).619
2013 読売ジャイアンツ 46-21(5).686
2012 読売ジャイアンツ 50-15(7).769
2011 中日ドラゴンズ 44-22(6).666
2010 中日ドラゴンズ 53-18(1).746
2009 読売ジャイアンツ 48-20(4).705
2008 読売ジャイアンツ 46-26 .638
2007 読売ジャイアンツ 43-28(1).605
2006 中日ドラゴンズ 50-22(1).694
2005 阪神タイガース 42-26(5).617

一方、日本シリーズは最大でも7試合しかない短期決戦なので、勢い
を重んじる。そのためには初戦がホームのチームはすごく有利に思
るが、日本シリーズの場合は不思議なことにホームのアドバンテー
がないに等しい。
日本シリーズにおけるホームゲームでの勝率は5割1分2厘(192勝183敗
7分)しかなく、将棋の先手番の勝率5割3分より低いぐらいである。

★日本シリーズホームゲームの勝率データ
→ https://baseballking.jp/ns/14318

営業もどうせ確率勝負だからと、犬も歩けば棒にあたる、下手な
砲数打ちゃ当たる、的な考えをするケースもある。だが時代は間違
なく勝率重視、効率重視である。非効率はなにごとにつけ、許され
くなっているのだ。

昔は一攫千金を夢見て低い確率で掘っていた石油も70年代になると
60%の確率で掘り当てることが可能になった。だが近年の発掘技術の
進歩は著しく、精度90%で掘り当てられるという。現代の石油ビジネ
スは勝率9割でなければ儲からないのだ。

ユニクロの柳井正社長は『一勝九敗』という本を書いている。
プロ野球チームが一勝九敗では話にならないが、ビジネスは一回勝
ば、九敗したって大丈夫なことがある。ユニクロの歴史は無数の失
の歴史でもあったと柳井氏。

建築家の安藤忠雄氏は世界の建築コンペに挑んでは敗れることを
り返していたそうで、『連戦連敗』という著書でその様子を克明に
いている。
冒険なら一回勝てば充分だが、競技なら5割以上勝たねばならない
安全や安心を売りものにする飛行機のフライトや外科手術の成功率
9割でも少ない。

ノーリスク、ローリスクが好ましく、ミドルリスクやハイリスク
避けたいわけだが、建築家にとって世界コンペに挑むことはハイリ
クである。安藤氏も書いているが、時間的・体力的・頭脳的・精神的・
経済的な疲弊は激しい。しかも勝率は低い。だが挑み続けた結果、
は「世界の安藤」になった。ハイリスク・スーパーハイリターンを
現したわけだ。

投資の世界に「リスク・リワード」という考え方がある。
コスト・パフォーマンスによく似た言葉だが、1回の最大リスクに対し
てどれだけのリワード(利益)が期待できるかを数値化したものだ
例えば、1回のリスクが1万円、期待リワードが2万円なら1:2と表す。
リスク100万円、リワード1億なら1:100になるわけだ。
賢明な投資家は前もってリスクリ・ワードを決めて投資行動するので、
「もっと上がりそう」、「まだ下がるだろう」などの個人的思惑を
除する。

私たちもなにかの経営判断に迷うことがあれば、「勝率」(成功率)
という視点と「リスク・リワード」という視点を思いだしてみては
うだろう。