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死に様、生き様を決める

「戦国武将や幕末の志士は、畳の上で死のうなんて誰も思ってなかったでしょうな」とU氏。わざわざ関東から訪ねてこられた方だ。

まさかスタバのコーヒーを飲みながら死生論になるとは思ってもみなかったので、私は「はぁ」と生返事をした。
「そもそもサムライは、命だって自分のものとは思っていない。大切な主君か上司のため、名誉のためと子どものころから教育されているからね」
「そうですねぇ」
「それにひきかえ今の若者は気の毒だ。命とはなにか、命は何のために使えばいいか、などは教えられない。だからみんな『命は大切だ、宝ものだ』と教えられるだけで、命の燃やし方は知らないままごく自然にみんな、畳かベッドで死のうと思いこむ」
「そうかもしれませんね」

戦争経験でもありそうな発言だが、U氏は私とそれほど変わらない年齢のはずだ。

こういう話題は酒の力を借りてやると気勢があがる。周囲で学生が勉強している図書館のようなカフェで、しかも初対面でする話ではない。私が興味なさそうな表情をしていたのだろうか、U氏は語気鋭く私に迫った。

「武沢さん、あなたはどうなんですか?」

「私ですか?死に方についてですよね」
こうなるとまともに議論しないほうがいいと思い、半分ジョークで申し上げた。
「私のベストは腹上死です。ベターは暗殺ですかね。どっちもロマンがあるじゃないですか?」

あっけにとられて私の顔をながめるU氏。ある組合の世話人代表として、年度末の総会で記念講演を打診にこられた。もうその打合せは済んだわけだが、「腹上死と暗殺を希望している講師です」と組合に報告されるかもしれない。

「死生論」といえば先日、名古屋セミナーに参加された女性がこんなことを言われた。
「私は仕事に忙殺されたい。いや、悩殺されてみたい」
そうか、忙殺・悩殺という死に様(生き様)もあるのだ、とそのとき教えられた。

悩殺とは普通、女性が美貌やフェロモンで男性の心をかき乱し悩ますこととされている。おそらく彼女は仕事の楽しさとやりがいで心がかき乱されたいのだろう。そういうのも「あり」だと思う。

これからこういう話題がでたときは、
「ベスト腹上死、ベター悩殺、グッド暗殺」と言わなくちゃ。いや、順番は本当にこれでいいのか?もう一度よく考えてみないといけない。