かつて船井幸夫氏は、儲かっている会社かそうでないかは会社の
り口に立つだけでわかると言っていた。
ある内臓専門医は、その人をみれば内臓の様子が分かると言ってい
プロとはそういうものなんだと思っていたが、採用専門のベテラン
ンサルタントはまったく違うことを言った。
「私はこれまでに1万人以上の採用場面に立ち会ってきたが、い
に人を見抜くことはできない」
その道何十年のプロなのに、人を見抜けないと聞いて意外に思った
のである。
船井さんや内臓医が一流で人材コンサルが二流なのか?
そういえば、プロ野球でもFA宣言したような実績ある選手が移籍
活躍できずにチームを去ることがある。現場を見つづけている本職
スカウトマンでも人を見誤ることが多いのは不思議だ。
つまりこういうことかもしれない。
「人」以外の「会社」や「内臓」などは確率論で見抜けるが、「人
は環境を触媒にして生きるので、確率や統計では見抜けないという
とだろう。
他社では有能だったが、当社では無能になることもあれば、その逆
ある。職場環境も文化も規律も歴史もちがう。製品やサービス、顧
もちがう。なにより経営者がちがう。
IBMの社内には「野ガモを飼い慣らすな」という不文律の教訓
そうだ。
『IBMを世界的企業にしたワトソンJr.の言葉』のなかにその
ドが紹介されているが、出典はキルケゴール(デンマークの哲学者
の教訓だという。
・・・
ジーランドの海岸に、毎年秋になると南に渡る野ガモの大群をみる
とができた。野ガモ(野生のカモ)たちが大好きだったある男は、
切心から野ガモにエサを与えはじめた。しばらくすると一部の野ガ
が餌づけに成功し、南へ渡らずにデンマークの海岸で冬を過ごすよ
になった。
その野ガモたちはエサを求めて飛びまわる必要がなくなり、やがて
べなくなった。秋になって野ガモの群れがもどってきたら輪になっ
歓迎するが、すぐにエサ場の池に引きかえした。
それから3~4年経つと、餌づけされたカモたちは丸々と太ってし
まったく飛べなくなっていた。
野ガモをエサで飼いならすことはできるが、飼いならされた野ガモ
野生に戻すことはできない。
・・・
餌づけされたカモは本当に幸せだったのだろうか?
IBMでは、野ガモは決して飼いならさないようにしているそうだ
とつ保証しない、という意味だと私は解釈したが、あなたの会社で
社員を野ガモのままにしているだろうか。ひょっとして餌づけして
まい、野生に戻れなくしていないだろうか。
ポストや待遇の良さで会社にとどめようとするあまり、餌づけに
ってはいまいか。
あるいは特定の部署や職務を長年担当させることで、どうにもつぶ
がきかない人にしてしまい、結果的にそれが餌づけ同然になってい
いだろうか。
終身雇用する覚悟なら餌づけしてもよいが、雇用を守れなくなっ
とき、餌づけされた人材は次の職場でつかえない。
人は一度で見抜くのはむずかしいが野生人材か餌づけ人材かは経歴
聞いてすぐにわかるはずだ。