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論語と算盤より その2

新紙幣デザインが決まったことから今週は渋沢栄一のことを学ん
いこう。渋沢を主人公にした小説『雄気堂々』がAmazonで品切れにな
るなど、早くも話題が先行しているようだ。

まずはウィキペディアで彼の歩みを確認しよう。

渋沢は江戸時代末期に農民(実家は豪農)から武士に取り立てられ
幕府のために働いた。明治新政府になってからは、大蔵省の役人と
り、大蔵大臣・井上馨のもとで事務方として働いている。
役人を辞めて実業家に転じたあとは、第一国立銀行や理化学研究所
東京証券取引所といった日本資本主義に必要な金融インフラを作る
事をした。

それ以外にいまの一橋大学や二松学舎大学や、東京経済大学など
設立にも尽力した。その他、彼の業績についてはとても書き切れな
のでご自身でご確認願いたい。

幼いころから論語を学びつづけた渋沢は倫理と利益の両立が大切
あると説いた。経済を発展させ、得た利益は独占するのではなく、
全体を豊かにする為に還元すべきとも説いた。しかも自らそれを実
した。

渋沢の業績をみれば、優に財閥の一つや二つつくれるものである
しかし彼は財閥を作ろうとせず、蓄財にも走らず、公の利益を優先
続けた。無私の人といわれるゆえんである。
さらに渋沢が言うには、富をなすのは正しい道理の結果でなければ
続する富とはいえない。不道徳や欺瞞、権謀術数的な商才による利
は真の企業家がもたらす利益ではないと教えた。いわゆる「道徳経
合一説」である。

『論語と算盤』で渋沢が言っていることの中から幾つかピックア
プしてみよう。

◇「道理ある所には自ら進んで世話をしてやる気にもなる」

武沢注:道理が通っていないことは世話をしない、という意味でも
る。道理とは目的や筋道のことであり、経営でいえば「理念」
や「ビジョン」である。道理があるところに人と金が集まる
ものなので、経営者は道理を作る人ともいえる。

◇「偉い人は人間の具有すべき一切の性格にたとえ欠陥があるとし
も、その欠陥を補って余りあるだけの他に超絶した点のある人で、
全き人は智情意の三者が円満に具足した者、すなわち常識の人であ
る。余はもちろん、偉い人の輩出を希望するのであるけれども、常
識の人の多からんことを要望する」

武沢注:突出した才能をもった英雄豪傑、ヒーロー・ヒロインの多
は渋沢のいう「偉い人」である。大物政治家や経済界の大物
もそういう人が多い。そして彼らの多くは智情意において何
かの欠点がある。
だが社会全体に足りないのは「偉い人」ではなく智情意を兼
ね備えた「常識の人」。だから渋沢は「常識の人」をたくさ
ん作ろうとした。
そして、真才真智というものは「常識の人」が発達して生ま
れるものであるというのが渋沢の考えだった。
まるで近代日本に孔子が舞い降りたみたいだ。

<明日につづく>