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論語と算盤より その1

映画「翔んで埼玉」で話題になった埼玉県がふたたび大いに沸い
いる。
新1万円札の肖像が渋沢栄一に決まったことから郷土・深谷市では万歳
三唱が起きるなどの盛りあがりだというのだ。

ちなみに今の肖像の福沢諭吉よりは5歳若い渋沢。一緒に仕事をした
ことはないようだが、渋沢の論文を福沢が激賞するなどの一コマは
った。
「がんばれ!社長」でもいままでに渋沢のことを14回書いているが、
この一週間は、あらためて渋沢栄一を追いかけてみたい。

渋沢は、江戸・明治・大正の三つの元号を生きた。そして、武士
官僚、実業家という三つの人生をおくっている。これは大変珍しい
とだ。しかも渋沢は、武士としても一流、官僚としても一流、実業
としても一流であり続けた。極めて稀な日本人といえる。

晩年「近代資本主義の父」と称されるようになった渋沢は、「論
算盤説」(「道徳経済合一説」、「義利両全説」)を提唱した。
渋沢が成功した秘訣は、ひとえに魔人のような勉強にあった。彼を
人公にした小説『雄気堂々』を書いた城山三郎は、渋沢に三つの魔
あったと述べている。「吸収魔」「建白魔」「結合魔」の三つである。

城山があえて「魔」ということばを使っているのには意味がある
一生懸命やる、なんていうものじゃない。とことん徹底して、事が
るまで決してやめない。そういう類いの鬼気迫る情熱と狂気。
それが「魔」といわれるゆえんで、渋沢にはそれがあったというのだ。

※ちなにみ今、Amazonで『雄気堂々』は品切れ中。これも新紙幣の影
響か。

「情熱と言ってもいいし狂気と言ってもいい。何かをやるなら『魔』
と言われるくらいにやれ。『魔』と言われるくらいに繰り返せ、と
うことです。渋沢栄一は三つの魔を持っていた。吸収魔、建白魔、
合魔です。普通にやるんじゃない。大いにやるのでもない。とこと
徹底して、事が成るまでやめない。
そういう『魔』としか言いようのない情熱、狂気。根本にそれがあ
かないかが、創業者たり得るか否かの分水嶺でしょう」
(城山三郎談、月刊『致知』2005年2月号)

「魔」としかいいようがない情熱、狂気。

明日は渋沢の著書『論語と算盤』の中から注目箇所をご紹介する予定。
お楽しみに。