1980年代、会社の定年は55歳だった。
ある年の正月、当時30代だった私に親戚のおじさんがこう言ったのを
覚えている。
「おじさんも今年53歳だ。再来年には定年になる。何をすべきかまだ
決まってないんだよ。いいなぁ、信行君は、まだ時間があるから」
ため息をつくおじさんに「おじさんは若いので何でもできるでしょ」
と言うと、おじさんは「50を過ぎた鋳物工場の作業員なんか誰も雇っ
てはくれんさ」と言い、正月早々やけ酒を飲んでいた。
結局おじさんは定年まで働いたあと、鋳物の商社をつくって69歳で亡
くなるまで元気に働いていた。
安倍総理は定年を70歳にしようとしている。今だったら親戚のおじ
さんは定年まで働けたわけだ。
社員の高齢化がすすんでいる。職場での安全対策や健康チェックなど
の対策が必要になる。
厚生労働省では高齢者をつかう企業にむけてこんなマニュアルを配
布して注意を喚起している。
★『高年齢労働者に配慮した職場改善マニュアル』
→ https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/0903-1a.pdf
必要な方はダウンロードし活用しよう。
高齢者だけが注意喚起の対象ではない。経費削減の一環で一人作業
の機会が増えている。万一のことがあったとき作業者の安全に問題が
おきる。体調急変、転倒や怪我などがあっても誰も異変に気づかず、
本人も異常を伝えることができないと大問題になる。
昨年発売された「Apple Watch Series 4」は、着用者が転倒した場
合、そのことを検知し緊急通報サービスに連絡する機能が付いており、
65歳以上の利用者はその機能が標準で「オン」になっている。
最近、ノルウェーに住む67歳の男性が、夜中に自宅のトイレで転倒
し、その場で失神した。スマホを持っておらず助けを求められる状態
ではなかったが、Apple Watchの転倒検出機能が役立った。
Apple Watchは、激しい転倒に見舞われたときバイブレーションと警
告音でユーザーに呼びかけを行う。画面に「ひどく転倒されたようで
す」という確認画面が表示される。利用者が「大丈夫です」のボタン
を押せば問題ないが、1分間放置すれば着用者の位置情報を添えて、緊
急連絡先に宛てて送信される機能だ。ノルウェーの男性はそれによっ
て一命をとりとめた。
あるビルメンテナンスの会社では24時間体制で契約者をサポートし
ている。深夜でも異常があれば社員が出動し処置をする。そのときは、
社員一人で対応するわけだ。
深夜、現場で何が起きるかわからない。全員にApple Watchを持たせ
る選択肢もあったが、この会社では転倒センサー「Me マモーレ」(み
まもーれ)を導入した。身を守れ、という語呂合わせだろう。
Bluetooth発信器とスマホの通信機能の組合せで異常を通報することが
できる。
転倒センサー以外に、ボタンを押せば手動で異常が伝えられることか
ら女性や幼児にも使って欲しいとメーカーは呼びかけている。
★Me マモーレ
→ https://www.takex-eng.co.jp/ja/products/item/8512/
高齢者や一人作業者がいる会社ではこれらの安全対策が必要になって
きている。